CLASSYが怖い

待合室で雑誌「CLASSY」を手に取ったらいわゆる着回し一ヵ月コーデというやつがあった。かつて蛯原友里が一世を風靡したころCancam*1で見た。単に服のコーディネイトを日数分並べたものではなく、物語仕立てになっている。

 

ヒロインは会社員。*2気になる同僚(イケメン)がいるが、相手には彼女がいる。「でも奪っちゃえ」とあの手この手で残業や休日出勤をフル活用して一週間もしないうちに仕事帰りに相手の家でねんごろになる。「朝帰りからの出社は最高の気分。彼が仕事中こっちをみないのがかわいい」「仕事が長引いたふりして二人で早上がり。オフィス恋愛の醍醐味」と釣り堀にしけこんだりやりたい放題である。

 

えらく早いし微妙な状況だけれど、ともかくハッピーエンドになったのかと思いきや職場には後輩(もちろんイケメン)が「あんな普通の人がいいんすか」と横やりをいれてくる。なるほど、三角関係で間を持たせるのか。

 

と、思ったら翌日友人(たぶん女友達)に誘われてライブへいき、ライブ明けにバンドマン(当然イケメン)に誘われる。「もちろん遊びだってわかってるけど、思い出作り」と割り切った関係に。

 

さらにバンドマンといちゃついているところを後輩に見られ、「彼氏(彼女持ち同僚)にバラされたくなかったらつきあってもらえますか」とゆすられて流されデート。早くも彼女持ち同僚がめんどくさくなり「あの日(ライブに行った日)からLINEは既読スルー」「会話が不要な映画デートで適当にフォローしておいたら機嫌なおった」と寒々とした見出しが続く。

 

最期は同僚とデートの日に後輩が来るように仕向け、彼女持ち男から破局宣言を引き出してほくそ笑むところで終わった。

 

なんだこれは、とわたしは思った。こういう雑誌の物語はシチュエーションは豪華でモデルの容姿は美化されていても、心理描写は親しみを覚える程度に身近なもので、好感が持てる女性がでてくるはずなのに、これじゃまるっきり頭空っぽで尻が軽いだけの腹黒女の一週間だ。

 

職場で一目置かれている描写がちらほらあるので、馬鹿女を書きたかったわけではなさそう。それともCLASSYが思う憧れのキャリアウーマンはまさか女島耕作なのか。CLASSYのキャッチコピーに「人生のいちばんいい時期である20代後半から30代前半を十全に謳歌する」とあるけれど、こんな人物に憧れる女性を想定しているとは思わなかった。

 

「彼ママに気に入られるいい子コーデ」とか「本命に選ばれる」とか結婚を視野に入れた話題が随所に見られるが「こういう雑誌読んでると、結婚できなさそう」と思わずにいられなかった。いくら見た目をよくして手練手管を磨いても、島耕作流の交際でパートナーシップが育つとは思えない。

 

「彼のイヤイヤ期」という特集もあった。正式な交際にこぎつけた後冷たくなる男の心理を覆面座談会で語るというもので、要するに彼女面するようになったら好意が失せるから冷遇するという話だった。「もう数か月こちらからは連絡をしていない」「好意が続くように努力してくれなきゃイヤ」とか三人男がくだを巻いている。こんな関係続ける価値があるのか。

 

これにアドバイスをしているのは婚活の仲人や大学教授らであったが解決策には料理の腕を磨くとか、気にせず趣味を楽しむとか、相手の態度に正面から意見するとか、これまた「あらためて聞く価値あるのか」と思うようなことが書いてあった。

 

そして読者投稿やお笑い四コマには男に落胆した話が目白押しである。男を手玉に取る話と、維持管理に苦労して愚痴をこぼす話で共感を誘っている。

 

これを「人生のいちばんいい時期である20代後半から30代前半を十全に謳歌する」女性に向けて書いているのか。これまでまともに手に取ったことがなかったけれど、他もこんなだとしたら、女性誌が想定する女性像は憧れる要素がなさすぎる。

 

この話を知人男性にしたら「その種の頭の悪さはむしろ男性雑誌の方がひどい気がします」といわれた。確かにそうかもしれない。「いい年した大人の女性向けの雑誌なのに」と思ったけど、プレイボーイ誌だって成人向けだし、文春でも新潮でもいい年した大人が手に取る前提で低俗な男女関係を煽る特集が山盛りだ。

 

でも、なんかこう、本気で切実に結婚を望む世代の女性向けまでこうなのか。ショック。交際とは縁がない非モテ自認の強い層向けの人物描写がご都合主義で非現実的なのはわかるけど、いわゆる恋愛には不自由しないリア充向けの雑誌ですらこうなのか。「男なんてちょろいw」とほくそ笑んで「男なんて!」と落胆して、相手を人間として見る楽しさ、面白さを語る場面はない。やはりモテは地獄である。

 

日本の結婚率が低い理由は「男女七歳にして席を同じゅうせず」を実質継続し続けて、互いを男女として受け入れる機会も、人間として共感する機会もないがしろにしているからだと思う。つまりデフォルトで仲が悪い。特別な理由がない限り男女が仲良くするのはおかしいという考えがベースにある。

 

モテ地獄上層の異性に対する恨みつらみは非モテを自認する層とは違うが、その凄まじさでは引けを取らない。

 

「男なんかに」「女なんかに」本当はここまでしてやることはないけど、攻略するまではいい気にさせておこう。生意気に餌だけ食って逃げやがった。ゆるせない。のこのこ食いついてきたくせにいい気になりやがって。釣ってやっただけ、かかってやっただけありがたく思え。おまえなんかよりもっといい男が、女が、いくらでもいる。

 

こういうのは、相手が悪いんじゃなくて、関わり方が悪い。だから相手を変えても関わり方が同じだったら結果も同じになる。

 

異性として意識したが最後、相手と自分の性的魅力と社会的地位だけを価値の尺度にする必要はない。また友達関係で性的魅力を封印する必要もない。男女を対戦相手とみなして虜にした方が勝ちみたいな考え方では友達になれない。友達になれない相手と家族になるのは大変だ。

 

仲人業界がいちから手取り足取り交際の方法を説明しなければならないのは、男女関係に疎い人たちばかりではないんだろうな。

*1:「お、IMEに入ってるやん」と思ったら誤表記だった

*2:漫画「NANA」のパロディで終電を追い掛けてヒールが脱げたあのシーンからなぜかスニーカー派になるというスニーカー特集