語り始めた金

寂しさに耐えかねて話し相手を金で買い、
金にモノを言わせて夜の街に居場所を作っている。

どんなにお金を積んでも
手には入らないものがある。
でも、金で手に入る幸もあるのだ。
買ってやろうじゃないか。

具体的には話し放題のオンライン英会話ネイティブキャンプに入会して南アフリカのシングルマザー講師と話したり、
24時間スポーツジムに入会してパーソナルトレーニングを申し込んだりしている。
意識高い風ぼっちである。

遅くに車で出掛けて
外で本を読みながら食事をして
カラオケにいって
真夜中のジムで走りながら Netflix をみたり
YouTubeを流してCount on me を練習したりする。

愛する人からのプレゼントはお金で買えない。
でも、愛する人へのプレゼントはお金で買える。
ベッドで寝転がってポチッとAmazoneで買う。

自分を愛してくれる人は売ってない。
でも、自分が愛せる人たちは巷にいて
愛する人に会うための手段や
一緒に過ごす感じのいい店を使う時間
レターセットや小包みを送る手段は買える。
一方的に好きになって
知り合うことも出来ず会えなくても
その人が書いたものや作ったものは買える。

セブではマッサージが安くて
人肌恋しく何度かいった。
セブのマッサージルームは真っ暗で
マッサージ師はしゃべらない。
人の手が触れると気持ちがゆるむ。
わたしはいつもマッサージへいくとしくしく泣いていた。

日本のマッサージはいいお値段だし
言葉が通じる相手から話し掛けられれば
こちらも気を使って話してしまう。
わたしが号泣していればやる方も気を使う。
人に触れる幸いを買うのは少し難しい。
男性向け風俗ならたくさんあるのに。

保護猫活動家から猫をすすめられるけど
家を空けがちな一人暮らしに動物は可哀想だ。
どちらが先にこの世を去ってもつらいしな。

でも筋肉は裏切らないと聞くし
世を去るときも一緒なので
筋肉を慈しみ、育てようと思う。

筋肉は育てたいなら室内飼いはダメで、
三時間おきに餌をやらないといけないらしい。
これまで構ってやらなかったので
だいぶ弱っているらしい。

筋肉向けの餌はAmazonで売っているので
金にモノを言わせて取り寄せればいい。
もちおのために買ったものもまだ残っている。
卵や鶏胸を茹でる気力が萎えていても
金にモノを言わせてコンビニで買えばいい。

金にあれこれ代弁して貰うために
毎日毎日働いている。
もうもちおに何も買ってやれない。
墓くらいか。
それくらいしかないから人は墓を建てるのか。

墓を建てても仕舞う人がいないので墓は買わない。
その金で筋肉を育てて、
仕事して、
金で買える幸せで、
急場をしのいでいこうと思う。

金を上手に喋らせて
金に上手いこと言わせて
わたしの話には興味がなくても
金を通じてなら話を聞いてくれそうな人やモノと
なんとかやっていこうと思う。

これまでどちらかというと金には
「出るんじゃないよ、あんたは引っ込んでなさい」
と出ていくたびに注意して、
金にやらせる仕事を何とか肩代わりできないかと
虚弱な一人子のように過保護に扱って
手元に置いておこうとしてきたけれど
これからは独り立ちしてもらって
楽させてもらおうと思う。

金に楽させてもらうために
せっせと働く。
しんどいけれども
いまわたしが育てているのは筋肉と金くらいなので
家族だと思ってがんばります。