夫を亡くしてセブ島に留学することになった その25 ホテル住まいの奇妙な話

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不可思議・不思議体験まとめサイト エニグマというオカルト板まとめサイトをときどき見ている。オチのない奇妙な体験談のまとめサイトである。最近広告だらけになって見づらいけれど、かつては淡々とまとめが貼られるだけのシンプルなサイトだった。

 

セブ島へ来てからエニグマに投稿したいような体験をよくする*1。上の画像はわたしにとってはエニグマ系、いわゆるユニーク&スペシャル案件なんですが、どの辺がオカルトなのかわかりますか。

これまでのお話 

 

勉強家の隣人

現在わたしたちはホテル住まいをしており、母とわたしは廊下を挟んではす向かいの部屋をとっている。天井は高く、部屋はダブルベッドをゆったりおける広さがあり、壁はモルタル塗りで厚く、床はタイル張り。ドアは厚い一枚板でドアスコープはない。

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 到着後三日目の朝のこと。母が「このホテル、壁がすごく薄くて気をつかうわね」といった。「え、そんな感じはないけど」「隣の音がぜんぶ聞こえるじゃない」「何も聞こえないよ?」「あら、じゃあはてこの隣は人がいないのね」

後でわかったが、当時わたしの隣室には3Dアカデミーのスタッフが住んでいた。しかしわたしは隣室から音がするのを一度も聞いたことがなかった。

 

母は到着後はじめての昼下がり、部屋でテレビを見ていた。するとまもなく隣の部屋から壁を叩く音がした。母はテレビのボリュームを注意されたのかと思い、驚いて音を小さくした。しかししばらくするとまた隣人が壁を叩いてくる。「勉強の邪魔なんでしょうね。もう、うーんと小さくしてみたけど、まだ叩いてくるの。壁が薄いのね」

 

母は壁を叩かれることにうんざりしてテレビをつけるのをやめてしまった。わたしは話を聞いて昼間にテレビの音が気に入らないからと壁を叩いてくる隣人が気になった。「夜遅くならわかるけど、日曜日の昼間にテレビの音で壁を叩いてくるってどんな人なんだろう。気をつけてね」

 

「隣の人、一日中、勉強してるの。夕方から夜遅くまで」

一週間ほど経ってから母がいった。

「なんでわかるの?」「だってノートに鉛筆で何か書いている音がずっと聞こえるもの」

隣で書き物をする音が聞こえるとは尋常な話ではない。襖で仕切られた旅館の話ならわかるが、壁は厚いモルタル塗りである。コブシで叩いてもずっしりと重い音がする。ここはレオパレスではない。

 

「いや、おかしいでしょう。そんな音、聞こえるわけがないよ」

「本当よ、ママが部屋に戻るなり勉強をはじめるのよ。ブツブツなにかひとりごとを言いながら」

「わたしの部屋は隣から声が聞こえたことは一度もないよ」

「いいわね、静かな人で。でも別に騒いでいるわけじゃないから文句の言いようがないわよね。ただぶつぶつ言いながらずっと何か書いているから気になって仕方がないの。男の子だと思うんだけど、ときどき急に女性が歌う声がするのよ」 

「男子学生の部屋だとしたら、部屋に女性がいるのはダメでしょう」

 

3Dアカデミーでは異性の部屋への立ち入りが固く禁じられている。見つかればペナルティ対象、最悪退学である。

「女の人がいるわけじゃないと思うの。だって声の切り替わりがあまりにも素早いんですもの。きっと自分で声を切り替えているんだと思うわ。先生に話したら、『女性の声が出せる男性だろう』って。セブには多いんですって」

母はこれですっかり納得した様子だった。しかし隣人が語学学校の生徒だとすれば彼はセブ人ではない。女性の声が出せる男性がセブでは珍しくないからといって隣室の声が男性によるものとは限らない。わたしは困惑してなんといっていいのかわからなかった。

 

反対側の部屋

「隣の部屋の子は勉強しているから仕方がないんだけど、反対側の子は夜になるとSkypeをしてるみたいで、外国語でずっと話してるわ」

「反対側の部屋って何の話?」

母は角部屋におり、壁を叩いてきた隣室の反対側に部屋はない。

「だって、聞こえるんですもの。うるさくて眠れやしないわ。朝も大音量で音楽を流したりして」

母はちょっとまずい状態にあるのではないかとわたしは思った。

 「一晩だけでも部屋を変わろうか?隣室の人にわたしから話をしてもいいよ」

「いやよ、やめなさいよ。ずっと住むわけじゃないんだから我慢するわ」

 

さらに数日後。

 「はてこ、昨日の夜、部屋でSkypeで話してた?」

「ううん。昨晩はどこにも通話かけてない。どうして?」

「女の人の話し声が遅くにしたから、はてこが部屋で仕事をしているんだと思って」

「一昨日は通話してたけど、それは聞こえなかったでしょう?」

「ぜんぜん聞こえなかったわ。じゃあ、きっと反対側の部屋の人ね」

 

相変わらず反対側に部屋はないが、母はどこかに従業員用の部屋があるのだと考えて譲らない。いよいよまずい気がする。

 

朝の訪問者 

「朝早く廊下を誰かぐるぐるぐるぐる歩き回ってるのよ。あれもすごくうるさいわ。そして毎朝二回、ノックしてくるの。何なのかしら」

「そんな足音聞こえたことないよ。眠っていて聞こえないのかもしれないけど」

「毎朝よ。はじめははてこがノックしたのかと思って急いでドアを開けたけど」

 

言われて思い出したことがある。到着二日目の朝のこと。

「今朝ずいぶん早く部屋へ来たでしょう。ドアを開けたけど間に合わなくて」

と母がいった。

「いってないよ?」

「そう?着替えていたから『待って待って!』っていって開けたんだけど、いないから部屋へ戻ったんだと思ったわ」

「ふーん」

このときわたしは母は何かほかの物音を聞き間違えたのだろうと思い、さして気に留めていなかったが、まだ続いていたのか。

「なんだかわからないけど、とにかく眠れないのがつらいわ」

 

この日は医師が学校に訪れる週に一度の往診日だった。母は医師に事情を話して眠気を催す薬を処方してもらった。通訳を引き受けてくださった3Dアカデミーのスタッフはたまたまわたしたちと同じホテルに長く滞在していたが、ホテルは壁もドアも厚く、騒音に悩まされたことは一度もないといった。 

 

以心伝心

薬を処方してくれた女医を母はいたく気に入って「とっても素敵な女医さんだったわ」とうっとりしながら戻ってきた。「お薬をいただいたから、今夜はこれを飲んでとにかく早く寝ちゃうつもり」

 

そして翌朝のこと。

 

わたしは目覚ましから波の音が流れるより早く、ノックの音で目を覚ました。軽く、小さく、素早く、二度、トントンと確かに音がした。しまった、母が起こしに来るほど眠ってしまったのか。

 

時計を見るとまだ6時だ。寝ぼけた頭が混乱する。まだ起きる時間ではない。よかった。窓の外から大音量で何か音楽が流れてくる。こんな朝早くに誰が騒いでいるんだろう。うるさいな。ところでさっきのノックはなんだったんだろう。

 

「昨日から急にお隣が静かになったわ」朝食の席で母がいう。「学校のスタッフが注意してくれたのかな?」「まさか。だって帰るなり静かだったのよ。横で聞いていたのでもない限り、こんなに早く話が伝わるとは思えないわ」

電話をかけたり、lineを送ったり、注意喚起する方法はいくらでもある。しかしノートに鉛筆を走らせる音を止めることなんてできるだろうか。

 

「今朝、外で誰か大音量で音楽流してたでしょう」わたしは平静を装って母に尋ねた。

「聞こえなかったわ」

「今朝は朝のノックはどうだった?」

「今朝はなかったの!はじめてよ」

 

「わたしの部屋にはノックが来たの」「小さな音でしょう?」「そう」「トントン!って短く?」「そう。トントン!って軽く」「朝早く」「早かった。6時ごろ」

 

「じゃあ、はてこの方へいったのね」

母の部屋をノックする音はこの日を境に止み、現在はわたしの部屋にしばしばピンポンダッシュ的なノックがある。つい母だと思って開けてしまうが、ドアを開けても誰もいない。大音量の音楽をときどき聞くが、廊下へ出ると外は静かだ。

 

母の隣人とは何度か顔を合わせて挨拶をした。ごく普通の、おそらく日本人の若い男子学生だった。母はときどきごく普通の音量で部屋でテレビをつけて、フィリピンメロドラマを見ている。隣人から壁を叩かれることはない。歌声も、ノートをめくる音もしない。

 

廊下をうろつく足音は母もわたしもいまだによく聞く。こちらは深夜に帰宅する学生がうろついているらしい。しかしノックの音が彼らによるものではないことは足音とノックのタイミングのずれからよくわかる。

 

天狗と小天狗の話

Twitterに書いた話。長くなったので今日はここまでにする。

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トップ画像のオカルトポイント

冒頭の画像のどの辺がオカルトか。これはセブの街並みを友人に送ったとき突然出てきたもので、わたしはこの画像を撮った覚えがない。もちろん画像フォルダにもこんな画像はないし、どこのなんだかいまだにわからない。 落ちはない。ゾッともしないし、ただただ何が何だかわからない。

*1:これとか