夫を亡くしてセブ島に留学することになった その19 帰らざる白物衣類とフェアトレードについて

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足湯用バケツの行く末から世界の将来に思いをはせた話。

 

これまでのお話 

 

セブ島風呂事情

シャワーだけの暮らしが想像以上にきつくて到着後まもなくバケツと電気ポットを買った。T'say Hotel はシャワーからしか湯がでない。そしてシャワーヘッドがない。つまりバケツに湯を張ることができない。まあ出ても湯はたいていぬるいので、熱い湯をわかすのに電気ポットが大活躍。確かバケツが1000円、ポットは1500円くらい。これに塩を入れてむくみ対策の足湯をする。毎日母と交代で使っている。 

 

こちらへ来てから知ったのだけれど、はぴらきさんも折り畳みバケツの利便性についてて熱く語っていたので、帰国したらこれを買って次回持参したいと思う。少しのことにも先達はあらまほしきことなりである。

 

追記:日本人経営のストハウスで立ち寄り湯ができるというタレコミをいただきました

  

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身体は石鹸と手ぬぐいで洗う。手ぬぐいは乾きが早く、かさばらず、あれこれ使えて本当に便利だ。しかしバケツに清潔な湯を張ってもそこに石鹸で洗った手足をつけてしまうと湯がすぐ濁る。湯を汲む手桶と手ぬぐいをすすぐ洗面器がほしい。でも持ち帰れないものが増えると帰国時に大変だ。

 

セブ島洗濯事情

バケツは洗濯にも使う。週に二度ランドリーサービスを受けられるのだけれど、洗濯機で激しく丸洗いしたんだろうなあという仕上がりなのでデリケートな衣類は怖い。母がランドリーに出した薄手の綿ワンピースはかぎ裂きができて戻ってきた。

 

またこちらの水はどうしたわけか日本で洗ったときは色落ちしなかったものまで色落ちする。紺色の手ぬぐいをすすぐたび水が青く濁る。ランドリーサービスに出した衣類は色物と白物を分けずに洗っているようで、先述の母の白いワンピースは薄汚れた灰色になって戻ってきた。「いちばんお気に入りだったの」と思い出しては凹む母。

 

母はリネン類もよそいき&とっておきを持ってきた。いまとなっては後悔しきりである。肌触りのいい純白のタオルは違和感のある手触りでグレイッシュに染まって戻ってきた。水に問題があるのか部屋で洗いなおしても元には戻らない。

 

母方の祖母は洗濯にこだわりのある人で、102歳で世を去るまで全自動洗濯機排斥主義だった。祖母は生前「洗濯槽と脱水層が同じ洗濯機では清潔に洗い上げることはできない」といっていたが、確かに祖母が洗い上げた衣類はそれはそれは清潔に、白いものはどこまでも白く、色物は色鮮やかに、美しく手触りよく戻ってきていた。

 

母はこの血を受ぎ、祖母ほどではないが全自動洗濯機はコースが終了しても衣類の状態を見てどう仕上げるかを判断する。「まかせちゃおけないわ」と母はいう。いわんやコインランドリーをやである。セブ島へ来てから母がホテルで手洗いするものは日に日に増え続けている。

 

わたしはとっておきの衣類は持ってこなかった。父方の祖父が「おじいちゃんは旅行には仕舞いにする服を持っていって宿に捨ててくる」と言っていたことを考えて、むしろ帰りに捨てていい服を選んできた。しかしわたしも淡いラベンダー色に染めた絞りのワンピースを一枚だけ持ってきており、これは手洗いする。やっぱり洗面器がほしい…!

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というわけで先日洗面器も買った。ホテルのクローゼットにはハンガーが一本もないので、ピンチつきのハンガーも買った。洗面器25ペソ、ピンチつきハンガー2本67.5ペソ。左上はサワーオニオンチップでこれは20ペソだった。計112.5ペソ※約230円

 

手桶の利便性についてはヒメネーこと堀井みきさんが熱く語っておられたので次回はこれを持参したいと思う。やはり少しのことにも先達はあらまほしきことなりなのだ。

ちなみにサイズは小さいが電気ケトルにも折り畳み式がある。レビューは上々。

 

はぴらきさんはこちらの電気コイルタイプを使っていた。軽量コンパクト、カップに直接突っ込めるし安い。一本欲しい。しかし足湯をするまでに対応できるかのう。電気ケトルの加熱部分も似たようなものだからいけるじゃろうか。

 

 

セブ島経済事情 

持ち帰れない洗面器を思い切ったのは使用後の引き取り先が決まったからだ。先日講師のひとりに「帰国するさい電気ポットとバケツを使ってもらえないか」と打診したところ、喜んで使わせてもらうという返事をもらった。彼女が滞在するドミトリーのシャワーも水圧が低くぬるいお湯しか出ないのだそうだ。セブは電気代が高いと聞くけれど、電気ポットの維持費に問題はないかとたずねたところ、自室で使う電気類といえばスマホの充電くらいで他に持っている家電品はないとのことだった。

 

こちらの時給相場は50ペソから100ペソ、約100円から200円だ。高学歴、高TOEICスコアを持って時給100円スタートの世界では、バケツと電気ポットを買うには4~7日分の給与が必要になる。低学歴スキルなしの給与はさらに低い。*1

 

講師は朝は学校から支給されるMILOを飲み、昼は持参した弁当を食べ、夜はほとんど食べないという。「痩せるよ!」というと「私はあなたと違って痩せていいのよ」と笑う。「太らなくていいけど、野菜は必要でしょ?」「そうね。私は故郷じゃ野菜を食べるし料理もするけど、ここで野菜をとるのは難しい。たまに外食するけど、野菜はあまりないし油っこくて」確かにセブの屋台料理は肉と炭水化物ばかりで油っこい。

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講師はこの暮らしの中から毎月故郷の親類縁者に送金している。彼女が特別貧苦に喘いでいるわけではない。別の学校の講師と意気投合して飲みに行った生徒が講師の自宅にあげてもらったそうだが、三畳あるかどうかという古くみすぼらしい居室に大変衝撃を受けたという。学校によっては季節労働者のように繁忙期のみ講師を増員し、その後解雇する。保障は何もない。

 

給与がいいのは政府関係の仕事、つまり公立校の教師、軍人、そして外資系のコールセンターだという。「コールセンターの給与はいいからコールセンター勤務者は100ペソの珈琲を平気で飲む。でもそれは失礼な顧客に対応して疲れてしまうから。三交代制で夜勤もあるし、オフィスは毎日とても寒い」きついけれども給与はいいといっても実際には夜勤分の上乗せありきで、実質的には語学学校講師と変わらないようだ。*2

 

フィリピンでは月に1万円もあればお腹いっぱい食べられて、そこそこの家に住めるというならいいけれど、彼らの多くはつましい暮らしを強いられている。わたしはそこに乗っかる外国人のひとりだ。個人的にフェアトレードを実践するとしたら何ができるのか考えてしまう。

 

英語ができたら仕事の幅がどんなに広がるかと思うのだけれど、フィリピンでは数多くの優秀な人材が生活苦にあえいでいる。政治的な問題も多く、マニラでは家のない子供たちが珍しくないと聞く。しかし安全な対岸から彼らを気の毒がっている場合ではない。

 

人件費が安く英語が堪能で若く力があり、機会さえあれば海外進出を願う働きものでいっぱいの国と、人件費は高く英語はおぼつかず、なるべく働かずに自国から出ないで暮らしたい高齢者でいっぱいの国が、10年後どのような道を歩んでいるかについても考えておかなければならない。