夫を亡くしてセブ島に留学することになった その17 HERO

英語の勉強と三度の食事が楽しみで早起きを続けてきましたが、生活の組織化が追い付かないため夜更かしがやめられず、無理が祟って持病の腎臓病が悪化したのか血尿に混じって血の塊が出てきた。疲れたり風邪をひいたりショックなことがあったりすると血尿はよくあるんですけど、血の塊を見てぎょっとした。

 

日本に帰っても休んでおくしかないのでひとがいてご飯が出てくるところで寝ている方がいいんじゃないかと思う。よく考えたら塩気が強いものを食べても血尿が出るので辛いおかずをモリモリ食べるのも控えて水をもっと飲むことにする。最悪帰国も視野に入れつつ週末は大人しくしていようと思う。

 

これまでのお話 

 

緑を求めて基地へいく 

今日は3Dアカデミー森田社長に教えていただいてホテルの近くの基地を散歩してきた。JY Squareを背にT'sayホテルの前の通りを突き当たったところです。

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この辺りを知らなければ「広々とした気持ちのいいところね」でおしまいなんだけれど、ゴミと排気ガスと埃まみれのセブシティJYモール周辺に、こんな静かで清々しいところがあるなんて信じられない思いだった。

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一時期森田社長が基地内をランニングコースにしていたいう。セブで表を走るなんて寿命が縮むと思ったけれど、確かにここを毎朝歩けば身体の調子もよくなるんじゃなかろうか。f:id:kutabirehateko:20181118002229p:plain

入ってすぐにブロンズでできたマシンガンとヘルメットが刺さった戦没者慰霊碑があり、解説を撮っていたら軍関係者がやってきた。案内を撮るのはいいが、慰霊碑を撮影するのはあかんという話だった。戦没者を「HERO」と呼んでいたのが印象的だった。

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数多くの島でなるフィリピンは70を超える言語があり、言語の数を上回る民族がいる。人口は一億を超え、平均年齢は23歳だという。それらの人々が一堂に会し、命を賭して戦った。この小柄ではにかみ屋で呑気で家族愛の強い人たちが家族を後にして戦場へ赴いたこと、家族を戦地で失ったことを重く感じた。血筋を遡れば自分もその戦争と無縁ではない。

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「国があなたに何をしてくれるかと問うな。あなたが国のために何ができるかを問え」ージョン・F・ケネディ

 

ブレス 

敷地には軍の宿舎があり、運動施設で球技に興じる子供や大人をたくさん見かけた。

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「座っていい?」と尋ねる母に「いいよ」と返事をする子供、同じく母から「これはなに?」と尋ねられて「蟻塚だと思う」と説明してくれる子供に出会う。

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見知らぬ外国人に話しかけられて普通に英語で返せるセブの子供は世界と繋がる力を持って大人になる。わたしたちはその片鱗を手に入れたくて遠く海を渡ってきた。

 

基地を出て路地裏を散策する。歓声をあげて通りを走り回る子供がいっぱいいた。「戦後はどこへいってもこうだった。いまの日本にはこんな光景どこにもないわね」母がしみじみとつぶやく。わたしが子供だった頃にはまだこういう光景があった。2018年現在、日本の平均年齢は46歳に届きそうだ。

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通りを眺めてぶらぶら歩いていたら突然ひとりの男の子が母のところへ駆けてきた。彼は黙って母の右手を取ると、甲を自分の額にそっとつけた。彼が後ろへ下がると彼のそばにいたさらに幼い女の子たち二人も続けて母の右手をとり、甲を各々の額にちょこんとつけた。以前カフェで珈琲を飲んでいたら幼い女の子がやってきて、さっとわたしの右手の甲を自分の額につけたことを思い出した。

 

調べてみるとこれはブレスといってフィリピン式の年長者への挨拶なのだそうだ。日焼けした小さく冷たい子供の手に包まれて柔らかな前髪に触れる感触は何とも言えない。

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見知らぬ外国人に自分の方から敬意のこもった伝統的な挨拶ができるフィリピンの子供らは英語力とは違う優れた強みも持っている。この子たちが慰霊碑を過去のものにできる世界であってほしい。及ばずながらこの子達が作る世界で働ける生き方をしたい。

 

来週の週末は学校主催のボランティア活動に参加する。フィリピンのさらに厳しい現実を見ることになると思う。人件費が安うて贅沢できると浮かれとったらあかんの。フィリピンが何をしてくれるかやのうて、フィリピンに何ができるか考えんといけんの。