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ナコルルを通して知ったこと

ゲームマナーとヘイトスピーチのことでご相談させていただいている方から、「必ず目を通してください」とメール添付された資料をプリントアウトして読んでいる。A4で47枚。新聞や書籍、中には国立国会図書館経由の資料もあった。ナコルルアイヌ問題、根が深いのね。

 

その資料の中に京都府在住のアイヌ民族研究家、チュプシセコルさんがナコルルの成人向け同人誌、ようするにナコルル同人ポルノの問題を指摘した記述があった。ナコルルと妹のリムルルは薄い本の中でずいぶんな扱いを受けている。「大自然」をキーワードにしたのか、熊を相手にした獣姦ものなどもあるという。

 

「(前略)大阪の人権博物館にもこの前同じ話して、この手の漫画を資料として収集しませんかと言ってあるけど。だって、被差別部落とか朝鮮とかを対象にしたこんな漫画は絶対にあり得ないもの。これは出したらあかんと誰でも思ってるし、例えば、アンネ・フランクが日本の男性と抱き合っていて、いいわ、なんて言ってる漫画描いたら、それこそとんでもないことになるよ。それをアイヌでやってるわけやから」

 

アイヌ、いまに生きる  西浦宏己 p120

 

この手のポルノの書き手は意図的にアイヌの人権を侵害してやれと思っているわけではなく、ただ無邪気にスケベ漫画を描いて仲間内の反応を楽しんでいるのだと思う。日本人のヒロインも獣姦漫画に登場することはある。ある意味で平等、公平にナコルルリムルルも薄い本の被害に遭っている。

 

問題は、もしかしたらこのようなポルノそのもの以上に、和人がアイヌを辱める創作活動を楽しむことがどれほど深刻な差別なのか、作り手がわかっていないということだ。ナコルルが好きだから薄い本にもなっているのだ、自分たちはアイヌを愛しているのだといわれても、アイヌの側は同胞の少女を無残に弄ぶ卑猥な創作物を名誉に思うわけがない。

 

チュプシセコルさんがおっしゃるように、差別構造の自覚がある人は被差別者を辱めるような創作活動を慎む。ドイツ人はユダヤ人の少女を弄ぶポルノをもって、これはユダヤ人への好意だと主張しないだろう。しかしドイツの同盟国であった日本人がアンネ・フランクを薄い本のヒロインとすることのどこが問題かわかる人は、これまで考えていたよりずっと少ないんじゃないかと今回の件で思うようになった。

 

ヘイトスピーチ関係の本を探しにJR博多cityの丸善へいった。書棚の最下段に数冊、背表紙にヘイトスピーチと書かれた本が並んでいた。上段には目に付くように表紙をこちらに向けた嫌韓本がずらりと並んでいた。小学校を襲撃され、商店を襲撃され、チョゴリを切られ、ネットで粘着され、国会議員まで尻馬に乗るこの在日朝鮮人差別の苛烈さに、当事者と支持者はどう抗するかという本の上に、朝鮮、韓国を誹謗中傷するメッセージをでかでかと書いた本が並ぶ。この国に生きる在日朝鮮人の方々はどんな気持ちでこのコーナーに立つだろう。

 

「また頭のおかしい国粋主義者が変な本出してるなあ」と眉をひそめるくらいで自分には関係ないと思っていたけれど、叩かれている側からすれば、わたしもこういう風潮を容認している呑気なマジョリティの一人だったのだなとようやく気がついた。知らないでいいってことないわ。知っておいた方がいいわ。

 

kutabirehateko.hateblo.jp