専業会社員体質の問題点

一か月ぶりの血液検査と2か月ぶりのCT検査と内視鏡検査が終わった。

 

血液検査は良好、CTと内視鏡検査の結果では告知当初もっとも懸念された問題が解消されていが、見た目が不穏な感じだった。内科医はやんわり問題の可能性を指摘していたが、検査医によれば横ばいということだった。どちらの医師の言葉を重視すべきかわからない。

 

検査の結果がどうであれ、できることを続けよう、と繰り返し話してきたけれど、やはり見た目のインパクトは大きく、もちおはピリピリしている。検査の数日前から気が立っていて、前日はだいたい眠れない。それが体調に影響している面もあると思う。

 

5月以降暮らしがどう変わったのか考えてみた。もちおの仕事量が増えている。思うところあって毎日続けていたジュース作りを止めた。気候は暑くなった。これ自体はいいんだけど、冷房の効いているところへいくとてきめん体が冷たくなる。あとは毎晩のようにやっていた足揉みや温熱を休んでいる。

 

仕事量の調整はわたしにはどうしようもない。ジュース作りを再開して、温熱と足揉みを再開してみようということになった。というか、わたしがやって、もちおはやってもらうということなんだけれども。もちおはやってもらうぶんには大歓迎。やってもらうと愛情を感じるのだそうです。そうだね。病気のときに白桃をひとくちずつ食べさせてもらったりするとうれしいよね。しかしなぜかあまり周知されないことだけれど、愛情にも物理リソースがいる。

 

闘病人がいる家の家事

がんの闘病記を読むと、食事療法や健康法に取り組んだと書いている男性は、だいたい妻にすべてをやってもらっている。女性は全部自分でやるか、娘か母親にやってもらっている。家事担当の女性が病気になると、自分の病人食と家族の料理を別々に作っている。あんまりだ、と思うけれど、そこで一念発起して家事を学ぶ男性は少数みたいだ。

 

さっき家事分担のことで喧嘩になった。最終的にホワイトボード問題を書き出して話し合ってわかったことは、もちおは「これまで家事ははてこが全面的にやってきたのだから、自分が家にいるからといって家事をこちらにふらないでほしい」と思っているということだった。もちおは現在我が家には従来の家事に加えて闘病に伴う仕事が増えていることに気が付いていなかったのだった。*1

 

これまで仕事をしていた時間を仕事に使おうが、趣味に使おうが、闘病のための運動その他に充てようが、それではてこの負担が増えるわけではない。それなのにこれまで以上に家事を負担せよというのは、自分が闘病のため家にいることを忘れているからではないか、ともちおは思っていた。俺は命の危機にいるのに、妻は俺がまるで休みでごろごろしているかのように扱う。ひどいじゃないか。もう死んだほうがましだ。*2

 

わたしはホワイトボードに「家事」と書き、その横に「病気」と書いた。そして「病気」から発生する雑用を書き出した。

 

 病院の送迎と付き添い、仕事で遠出するときの運転代行と待ち時間、食事療法で料理が変わること、買い物の内容が変わること、定番作り置きができなくなること。ひとりで集中してやっていた家事にまとまった時間が費やせないこと、もちおの予定に合わせて予定を立てるため、長期的な計画が立てられないこと、一日の予定がわからないと時間配分が難しいこと、などなど。もちおはそれを見てようやく家の仕事が増えたことに気が付いた。*3

 

看病がうまくいくかどうかは必ずしも愛情の多寡ではない。物理リソースの配分にどれだけの余裕があるかは大きい。「せめてやさしい言葉で」というけれど、やさしい言葉をかけるにも心の余裕がいるわけで、心の余裕があるかないかは時間や体力の余裕と密接に関係している。

 

社会人総専業会社員社会

もちおは「家事は女の仕事、はてこは主婦なんだからはてこがぜんぶやるべき」とは思っていない。それどころかそういう思想を軽蔑しており、家事は夫婦で分担するもの、妻に押し付けるなんてとんでもないと思っている。でも家政を学んでこなかったので、もちおは家事に何が含まれているのか具体的にイメージできない。全貌が見えないからそのうち何割くらいを負担しているのかわからないし、気づかないところでどんな仕事が進行しているのか気が付かない。 

 

もちおの両親は「男の子は勉強をして、いい会社に入って、家のことは万事奥さんに任せて」という教育はしていない。けれども社会は帰宅後家事をしない人、いわば「専業会社員」の就労を前提に組み立てられている。だからどこかで「いくら外で稼いでも家事ができないと自立したまともな生活はできない」ということを教わるか、学ぶかしないと、人は家事を身に着けない。

 

これは性差の問題ではない。女性であっても家事の意義とやり方を学んでいなければ家事はできないし、男性であっても家事の大切さを肝に銘じて取り組んでいれば実践できる。「女性の社会進出」が「女性の専業会社員化」だとしたらこれは大変だ。専業会社員は家事専業の誰かに支えてもらわなければ暮らしが成り立たない。運よく家事専業のパートナーをえたとしても人生はいつも専業会社員をしていられるほど平穏ではない。

 

 

こんな風に書くといったいどんな家事分担で揉めているのかと疑問に思う人がいらっしゃるかと思いますが、手伝いそのものというより、もちおは仕事を中断することが大嫌いなんだよね。

 

わたしだって寝食忘れて大好きな仕事に没頭してたいわ。食事も薬も運んでもらって片手で食べて、夜明けにばったり床で寝て、数日起きに風呂に入ってみたいな生活。もっというなら「ごはんよ」って呼ばれて、出されたものを何も考えずに食べて、沸いているお風呂に入って脱いだものがいつのまにか清潔になって引き出しに入っている生活。でもそれは生活のすべてを他人に依存する乳児で卒業することだって、そろそろわかってほしいわん。

*1:そもそも我が家は一応共働きなのにおまえが朝星夜星で働いているから哀れに思って全面的にやってたんだろ、だいたい家計の負担に関係なく家事は家族全員が協力し合うもので、もっといえば結婚後家事は一切しないでいいといったのはおまえだろうが、とも思うのだけれど、今回はそれは置いておく。

*2:本当にこんなことを言うのよね。

*3:いつまで覚えているかはちょっとわからないけれども。