互いにディープな趣味を持ったカップルに仲良しが多いという話

永田カビさんがpixivで連載をしていた。

comic.pixiv.net

実家住まいの葛藤とハグについてのあれこれが後日談に。現実の物語は「めでたし、めでたし」で終わらない。2話は止まらない寒気で人肌を求めハグ探しの旅に出た話。人肌の威力がよくわかる。イスラエルの王ダビデも晩年何をやっても温まらず、美少女アビシャグを人間湯たんぽとして床にいれてようやく温まったって聖書に書いてある。

 

永田カビさんはコミュニケーションの難しさを説得力のある作品にして読ませてくれている。サービスとしてやってきた初対面の相手といきなりベッドを共にすることを「トーナメント戦にシードでいきなり決勝に来てしまった」と表現されていたところはとくに印象に残った。コミュニケーションの難しさを見事に伝えている永田さんはコミュニケーション能力が高い。このパラドクス。

 

オタク=コミュ障という書き方をする人が当事者にも部外者にもいるけれど、同人活動は作品を作るにも、イベントに参加するにも、売るにも買うにも、そして同好の志と語り合うにもコミュニケーションが必要だ。それもモテテクみたいな、目的を達成したら二度と会わない人にウケのいい対応をするようなものではなく、合理的で確実に目的を達成するようなコミュニケーション能力が。知人に何十年単位で地域のイベントを主催している人がいるけれど、入れ替わり立ち替わりする少年少女中高年をよくまとめているなと感心する。

 

去年のいまごろから恋愛工学とモテについてあれこれ考えた。モテ側の人は人間不信のコミュ障で、いうなれば24時間365日ミッキーマウスの着ぐるみの中で安心していられる人だ。でも有機的なリレーションシップを作り出すオタコミュニティにいる人は、どこかで開き直って弱さやかっこ悪さを見せながら人の信頼を勝ち得ていくように思う。なのでモテ地獄頂点にいる人は結婚したあと厳しそうだけれど、カムフラージュ技術より開き直った暴露系の方が、非モテ自認が強くても結婚してから将来明るいと思う。

 

知り合いの仲良し夫婦はうちも含めてだいたいそっち側。いや、うち以外はふつうにモテているのかもしれないけれども、現在の仲良しムードは間違いなく「結婚しても恋人、男として女として」みたいなのじゃなく、一般受けしない趣味や活動によって深く濃く強まっている。結婚したら卒業だなんてとんでもない。いけませんよあなた。

 

よく考えたらディープな趣味というのは様子を見ながら距離を調整するにはいいものかもしれない。まず初対面でも意気投合して語り合える。趣味を通じて顔見知りになる機会がある。顔見知り期間にさほど個人情報を出したり自己開示をしたりしなくても話が盛り上がる。また作品や活動に対する姿勢について話し合うことで聞きづらい、話しづらい個人的な価値観を知ることができる。

 

たとえばよく知らない相手に「LGBT差別についてどう思いますか」と話をふるのは難しい。(知ってる相手だとそれはそれで難しいよね。)でもゲーム・オブ・スローンズファンと話しているときに「薔薇の騎士ことロラス・タイレルの男好きってどう思う?」と話すのはさほど波風が立たない。「男好きはいいけど時と場を選べよ」というか、「気持ち悪いよなー」というか、相手の反応を見ることができるし、自分も作品に対するスタンスとして考えを語ることができる。

 

パートナーと趣味の話をするところはこんな風になにかと話題があるからその話を通じて互いの価値観の擦り合わせができる。漫画やアニメだけじゃなく、最近読んだ本のこととか、すきな選手のプレイやトレーニングのこととか、自転車や靴のこと、それを作っているメーカーのこととかね。

 

もちろん議論が白熱して激論になることもあるけれど、爆笑したり目から鱗だったり大いに盛り上がることもある。目の前の現実がとても厳しいときに、そういう話題で正気を取り戻すこともある。絶望の淵にいたとき、我が家はスローンズにずいぶん助けられた。

 

趣味はペットのように話題を提供してくれる。家庭内別居中、インコを通して会話していたという夫婦がいたけれど、趣味の最新情報は話題をかえるきっかけをくれることもある。

 

実母と実父は映画が好きで、夫婦時代は映画の話をよくしていた。二人にとっての名画が同じころは二人はまだそこそこ上手く行っていたように思う。父は母と別れてからシアタールームを作り、いまは一人で映画を観ている。現在の妻とは映画の趣味が合わないみたいだ。母は劇場が好きで、いまも単館映画を観るのを楽しみにしている。「いい音楽、いい映画、美味しい料理は、ひとりで楽しむものね」と母はいう。

 

二人がいま劇場で待ち合わせて映画を見られる仲だったらおもしろいかもなと思う。これまでのことと、いまの暮らしを離れて、同世代の一映画ファンとして。どこかでひっそり、お茶でも飲みながら。

kutabirehateko.hateblo.jp

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