テキストリベンジポルノ

木嶋佳苗の「礼讃」を去年図書館で借りて読んだ。予約数がすごくて、なかなかまわってこなかったので、次の方のために急いで読もうと思った。読みやすい文体で、すいすい読める本だった。

 

いろいろあって感想を書きそびれていたのだけれど、さっき久しぶりに木嶋佳苗の拘置所日記を見たら、拘置所から受け取った原稿を代理入力する係りの人となにかあったようで、手書きの葉書きを画像掲載するようになっていた。いぜん遺言書や脅迫状などの筆跡を鑑定する鑑定師が彼女の筆跡を鑑定しているのを読んだことがあるけれど、これだけ画像が集まると筆跡が読める人にはわかる情報も増えるのだろうな。

 

近況ではちょっとしたエッセイ風に、実の甥と姪、そして子供たちの母親である佳苗の妹の話を書いていた。雑誌などのエッセイと違うのは、この三人の実名と年齢と誕生日、結婚や出産にいたるまでのごく私的な、おそらく身内にすら知られたくないであろうことまで書いているところだ。これが本当なのかどうかはわからない。いずれにしても妹さんに釈明の機会はない。

 

犯罪者の親族であると世間に知られることがどれほどの脅威になるのか、もちろん佳苗にはわかっている。*1木嶋の性根の悪さは並大抵ではない。「礼讃」でも、例の100日裁判の中でも、木嶋は当事者が世間に知られたくないようなことを他の問題に絡めてさらっと曝露している。ブログでは獄中で入籍した男性の親族に名指しで頼みごとをしたり、関係がこじれた支援者家族の住まいや暮らしぶりを仄めかしながら、やはり名指しで呼びかけてもいる。

 

死刑が確定している受刑者のブログに、自分のみならず家族の私生活や性生活について名指しで書かれる。真偽を弁解する場もない。弁解するには自分が当事者で、犯罪者の身内や関係者であることを明らかにしなければならない。どれほどダメージの大きいことだろう。木嶋はこれを個人的に関わった大人だけでなく、その未就学の子供にまでやっている。

 

身内であろうが他人であろうが許可なくブログに第三者の名前や年齢、居住地や経歴を盛り込んで公開すれば、普通は即刻強制非公開をくらう。場合によってはid削除は間違いない。livedoorがどうしてこれをゆるしているのかわからない。

 

人は激情的になっていても目の前の人の目玉を素手でえぐるようなことは滅多にしない。相手をそこまで傷つけることへの躊躇もあるけれど、相手を八つ裂きにしてやりたいと思う場合であっても「人の目玉を素手でえぐった者」として知られることを恐ろしく思うからだ。

 

自己保身を考える人は匿名で曝露本を書く。チクリやタレコミも匿名で、顔を見せずにやる。ネットに書くなら2chか増田に書く。しかし肉を切らせて骨を断つ人は実名でこれをやる。どれほどでたらめな話でも、裏付けが何もなくても、実名だというだけで真実味は一気に上がる。こういう人に心を開いて私的な話をするのは恐ろしい。

 

リベンジポルノは下衆で劣情を煽るものほど伝播力が高い。それはテキストでも同じだ。性的なものとは限らない。第三者の下衆な好奇心を満たすものなら、そして本人が他人に知られたくないと強く思っていることならなんでもいい。木嶋は個人の黒い過去やゴシップを短く鋭くさりげなく自分の話に盛り込む。局部をアップにするように、話のもっとも卑猥なところを強調する。

 

画像を使ったリベンジポルノなら撮影状況と撮影者との関係がわかりやすいものほど信頼度が高まる。テキストなら書き手が正体を明らかにしたものに注目が集まる。

もちろんそんなことをすれば自分の評判もただではすまない。でも木嶋はそんなことは気にしない。世の中には自分の肉を切られることなんてなんともないと思う人がいる。そういう人に同情を寄せて自分をあずけるのは本当に危険だ。被害を受けるのは自分だけでは済まない。

 

人心掌握に長けた人はモテる。そういう人は人のくすぐりポイントを見抜く目と、同じひとのアキレス腱を鉈で断ち切る攻撃性と、そのあとなお自分を憐れんで泣く自己愛を持っている。木嶋と関わった被害者とその家族、遺族は裁判でどれほどの辱めを受けたことか。攻撃の手を控えてもらえるのは相手の得になる立場いるときだけだ。もっといいのは関わっても何の得にもならない相手だと思ってもらうこと。モテ農夫にモテてもろくなことはない。心ならずも木嶋と戸籍上の親戚になってしまった方々のご苦労がしのばれる。

 

kutabirehateko.hateblo.jp

*1:殺人容疑の証拠は最後まで出てこなかったが詐欺事件は枚挙にいとまがなかった。

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