田舎暮らしと虫との戦い

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はじめての一人暮らしだからまあしょうがない。

 

わたしも田舎の一軒家に住んだことがある。その前はトレーラーハウスに住んでいた。

こいうの。

 

車の後ろを一部改造したものじゃなくて海外メーカーの、人が住んで暮らすことを前提に作られているやつ。リビングにベッドルーム二つ、ユニットバスに大きなオーブンのあるシステムキッチンつき、というもの。リビングのソファが映画「フットルース」に出てきた飛出し型のソファベッドになっていて、感激した。

 

その前は首都圏のワンルームに住んでいたので、*1トレーラーハウスの広さと内装の豪華さは眩しかった。天井にはシーリングファンつきのお花のランプ、窓にはレースとピンクのカーテン、優雅な張り出し窓。80年代のハリウッド映画っぽい内装だった。 こんなすてきなところに住めるなんてと感激した。

 しかしこのトレーラーハウスは虫屋敷であった。

 

黒蟻と白蟻

おそらく断熱材の中に巣を作っているのだと思うのだけれど、まず黒蟻が毎年春先に巣の大掃除をはじめる。具体的には電話を置いていたキャビネット付近の天井から、冬の間にこの世を去ったのであろう黒蟻どもが毎日毎日投げ落とされる。蟻の墓場認定された電話まわりはうじゃうじゃするごま塩でいっぱいだ。ゴマにはみな足と触覚がついている。中にはお迎えがまだ来ないうちに投げ落とされたのもいて、うじゃうじゃ動く。

 

そして毎年5月ごろにシロアリが引越しをはじめる。おそらく床下の土台を食い荒らしているのだと思う。引っ越しといってもいなくならないので、ある程度増えると巣わけだか暖簾分けだかで一部が飛び立つようだ。

 

こいつらはどういうわけか引越し前に家の中を縦断する。

 

具体的には張り出し窓の下あたりからよじ登ってきて、天井付近を移動し、最後は浴室の壁いっぱいに羽をふるわせながら集まる。外へ行くんだから外を通れよ、と思うけれど、セレモニーとして通らないわけにはいかないのかもしれない。これは一晩で終わるので、黒蟻より後腐れがない。しかし気持ち悪さの点では黒蟻を凌駕する。通り道に寝室がなくてよかった。

 

カマドウマ

寒冷地だったのでGのつく虫は出なかった。しかし道民にはおなじみらしいカマドウマがしょっちゅう出た。カマドウマというのは茹でる前のブラックタイガーに大きなバッタの足とGの触覚をつけたような虫で、飛車のように動く。つまり前後左右どちらかに飛ぶ。必ずしも頭を向けている方向とは限らない。飛車と違うのは上方向にも飛んでくるという点だ。

 

「やつらはどっちへ飛ぶかわからないんですよ。うちは厚紙に輪ゴムをかけたものを常に用意している。倒し難い敵」と道民の方から聞いたことがあったが、カマドウマに対峙するとゴールキーパーの気持ちになる。

 

わたしはカマドウマの捕獲にチーズの空き缶と下敷きを使った。カマドウマがあらわれたら床に静止するまでじっと待つ。そしてパッと手を放して真上から缶を落とす。このとき手以外のところを動かしてやつらに先読みをさせないこと。さすがのカマドウマも落下速度には勝てないようで、この手を使うようになってからは駆除率が上がった。カマドウマは缶の中で飛び跳ねているが、缶の下に下敷きを差し込んで蓋をすれば簡単に捕獲できる。わたしはカマドウマには比較的抵抗がないが、こんなこと、Gじゃぜったいにできない。

 

カマドウマはいたるところにあらわれる。地域の別荘で風呂を借りたら風呂の排水溝から入ってきたカマドウマが浴槽中ぴょんぴょん飛び跳ねており、熱湯で流したこともあった。*2

 

いちばん驚いたのは太腿がチクチクすると思ってふとスカートの裾をつまんでみたら、ストッキングの中にいたこと。いったいなぜそんなことになったのかいまだにわからない。

 

見た目がグロテスクなだけで何もしないんだけど、はじめて見てもなんとも嫌な感じなのよねえ。

 

虫より困るもの 

でもトレーラーハウスでいちばん困ったのは虫ではない。冬場に水道管が凍って水が出なくなること、そして地域の変質者に一人暮らしだと知られて警察のご厄介になる羽目になったこと、鍵が壊れて誰でも出入り自由になってしまったことだ。鍵の形状が特殊で直すことも新しくつけることもできなかった。いまでは考えられないことだけれど、数年のあいだ、寝室の鍵だけを頼りに毎晩無事を祈って眠った。

 

その後わたしは麓の一軒屋に越した。ここはインフラも整っていたし変質者も出なかった。虫も困るほどバッティングしなかった。しかしここにはネズミが出た。そしてなんかこう、あれよ。この世のものならざるもの?あれがね、いたっぽい。それはそれで大変だった。

 

次に住んだのは横浜のオートロックセキュリティばっちりマンションだった。虫もネズミ出ないし変質者も入れない。年中水が出て、お湯も出て、お化けも出ない。でもわたしが身体を決定的に壊したのはここだった。国道と高速道路と複数の鉄道に貨物列車が建物の前後に走っており、昼夜を問わず騒音がすごかったのだ。

 

繁華街やパチンコ店のそばならその破壊力にすぐ気が付いたと思う。しかし車の音って大丈夫な気がするのよね。電車も下見に行った時間立て続けに走るわけじゃないし。あとで思えば無料でゆうせん放送がひかれていたのはそういうわけだったのねえ。

 

居住力と経験値

そんなわけで住まいのツボがわからなくて後で苦労する気持ちはよくわかる。こういう経験はその後話のネタになるし、自分と自分を取り巻く環境について再認識する経験になる。若いうちにやっておいて損はない。お金がかかった?この世でいちばん高くつくのは人生勉強代なのよ。ドンマイ。

 

これに懲りずにまたいろいろ挑戦してみてほしい。応援してる。見てて面白いからな。「そら見たことか」って言いたいだけの人には言わせておけばいいよ。

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*1:和室をベニヤで板張りにして洋間風にした学生向けのアパート。女学生狙いの変質者がばんばん出た。

*2:その家の主はそれをやるのが嫌でわたしに風呂を熱心にすすめたのであった。