「夢でよかった」

先日もちおと鳥取へ湯治へいって温泉宿で布団を並べて眠った。

朝方わたしが目を覚ますのとほとんど同時に、もちおが「あぁ!」と声を上げて起きた。

「…ああ…夢か…夢だったか」

並んだ布団に手を伸ばすともちおがこちらに入ってきた。身体が強ばっている。

「よかった…よかった」

もちおは妻を抱きしめて泣いた。様子がおかしくて少し怖くなった。

「怖い夢みたの?」

「うん」

反射的に「死の夢では」と身構えた。

「結婚して一ヵ月ではてこさんが死ぬ夢やったそいや。俺、自転車乗りながら泣いとった。よかった…夢でよかった…」

そっちか。

 

「結婚して一ヵ月ではてこさんが死んでしまってな。葬式も終わって、あのとき住んどったマンションにはてこさんの親戚みたいなばあちゃんと俺と二人で話とるんよ。『美人薄命っていうもんねえ。ばあちゃんが料理を作ってやるから肉を買ってきなさい』っていわれて、俺自転車乗りながら『一ヵ月しかいっしょにおれんかったなあ…』って泣いとった。夢でよかった…」

 

もちおは妻を抱く腕に力を込めてまた泣いた。涙が温かかった。(これは分岐した未来の夢だ)と思った。わたしは結婚当初、本当に数か月で死にそうだった。結婚の条件はわたしを看取ってあとの始末をしてくれることだった。

 

もちおはわたしと出会ってからしなくてもいい苦労をわたしのためにずいぶんした。告知を受けてから「もしもわたしと結婚しなかったら、もちおはがんにならなかったんじゃないか」と何度も思った。もちおもそう思うことがあるんじゃないだろうか。後悔しているんじゃないかと思った。

 

「よかった。いっしょにおれてよかった」ともちおは妻を抱きしめてしばらく泣いていた。もちおがよかったのならよかったんだと思った。何がもちおにとってしあわせかをわたしがジャッジしようとするなんて差し出がましいことだ。

 

さっきもふらりとやってきて「もちおははてこさんの文章読んで結婚しようと思ったんだから、書いたらいいよ」といって、妻の頭をぽんぽんして去って行った。

 

というわけで、わたしはこれからもほそぼそブログを続けてまいりますので、応援してくださるみなさまには、今後ともよろしくお願い申し上げます。いつも影に日向にあたたかいご声援とご支援ありがとう。

 

今日のダンナ CommentsAdd Starbabi1234567890 (green)kwi22zzteralin

個人の収入を決算している妻。

「思ったより稼いでた」
「ほう!すごいね」
「『はてこはそんなに自由に使えるお金もっててずるい』ってもちおが思うんじゃないかってちょっと心配になったの」
「へえ」
「でも、もちおはきっと『はてこに好きなものを買ってやる機会が減って残念だな』って思うだろうと思ったの」
「そこまでじゃないな」
「あ、そうですか」
「うん。残念じゃないよ。俺ははてこさんが好きだからほしいものを買ってやりたいんだよ。はてこさんが貧しいからじゃないんだよ」

もちおは愛妻家じゃなかったらジゴロの才能あったと思う。
 
 

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