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甥太郎と温泉に

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昨日は春休みで帰省してきた妹と高校生の甥が、はてこの父親夫婦とともにやってきた。もちおはすこし調子がよく、ベッドから起きてきていろいろ話をした。

 

少し前にわたしの実家の近くにいい温泉があると知った。「調子がよくなったらいこう」といっていたのだけれど、そこには家族風呂がない。もちおはやりすぎ温熱療法でブラックアウトしかけたことが何度かあるので、ひとりで入らせるのが不安だった。今日だったら甥がいる。ということで、急遽妹親子と温泉へいくことになった。

 

甥太郎が保育園から中学に入るまで、わたしたちは妹親子の近所で暮らしていた。もちおはよく甥太郎と風呂に入ってくれた。妹が離婚してから甥太郎と風呂に入れる男性はいなかったので、妹もわたしもこのことをとてもありがたく思っていた。とくに温泉など大浴場で男女わかれるときに甥太郎の心配をしなくてすむのはありがたかった。今回は甥太郎がもちおの力になってくれる。

 

もちおが容赦なく痩せていくのだ、いまこのくらいだ、と妹に話すと妹は「甥太郎と同じじゃん」といった。甥太郎はもちおより10cm背が高くなった。いわゆるヒョロガリだけれど不健康な感じではない。もちおが何キロ痩せたかに気をとられていると不安になるけれど、それで元気な人もいるとわかると少し安心する。

 

温泉はなかなかよかったようで、もちおは気分よく甥太郎とあれこれ話している声が、露天風呂の衝立ごしに聞こえた。上がってからも寝るまで身体が温かかった。

 

帰りに実家へ寄った。継母は「なんでも食べたいものを美味しく食べるのがいちばん」主義で、実家では「ガンによくないものリスト」に上げられるようなご馳走が出てきた。わたしはものすごくハラハラしたけれど、もちおは食べてみたいと思ったようで、パクパク食べていた。継母おおよろこび。でももちおの前で煙草を吸うのはやめてほしい。実家に泊まって湯治に通うように熱心にすすめられるけれど、煙草の煙がすごいから無理ですと言えないので足が遠のく。

 

帰りの車のなかでもちおが「前と同じものを食べられると、ちょっと『大丈夫なんだ』って気持ちになるんだよ。いつもあれじゃまずいけどね」といった。何にしても食べられることはありがたい。いくら身体によくても身体が受け付けなければそれまでだ。

 

「食べない」んじゃなくて「食べられない」のは本当につらい。でも食べてもっと悪くなったらと思うと怖い。「身体を動かさない」んじゃなくて「動かせない」のはつらい。でも動かしてさらに悪化したらと思うと怖い。がんを告知されたら読む本に、癌の怖さは痛みや不自由さではなく、不安で精神をむしばむところだと書いてあった。本当にそうだ。いちいち「これは吉か、凶か」と考えてしまう。

 

物語はこういう袋小路から抜け出す道を開く。漫画や小説やドラマや映画にもずいぶん助けられている。告知以来会っていなかった継妹が、会わなかった間に買い込んだ漫画をどっさり貸してくれた。

 

もちおは昨夜から今朝にかけて「岡崎に捧ぐ」を読んで爆笑していた。

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わたしはお見舞いに贈っていただいた本を読ませていただいている。この本は「あれもこれもやったらダメ、あれもこれもやらなきゃダメ」という闘病縛り地獄感がなく、希望がある。読むのが楽しみ。

 

この本をプレゼントしてくださった方に、そしてバターや珈琲、ギフト券を送って下さったみなさんにも心からお礼申し上げます。ありがとうございました。

「ひとりひとりにお礼をしたい」ともちおが申しておりますが、ご連絡先がわからない方へ、この場をお借りしてわたしたちの感謝をお伝えします。

 

kutabirehateko.hateblo.jp

*1:小学生のころの甥太郎画伯の絵