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男子の性衝動をカルマか何かように特別視する風潮

 

 

 

「クラスメイトのリコーダーを舐めたり、体操着を下着ごと盗んだりしていたことを、後年よく知らない年下の女の子に膝枕してもらいながら告白して泣いたら、その子が身内から性暴力被害を受けている子だった」という男性のエントリーが話題になっている。

ymrk.hatenablog.com

子供は人のモノを無断で使ったり、盗んだりする。それは未熟さと自制心のなさゆえで、白眼視するほどのことではないと思う。古くはメンコやビックリマンチョコ遊戯王カードなど*1、子供は欲しいと思ったものを悪いことだと知りながら盗む。女の子だってやる。学校でお気に入りのサンリオ商品を取られたという話は枚挙に暇がない。

 

しかしこの書き手は自分が窃盗を働いたという自覚が薄いんじゃないかとこのツイートを見て思った。

「体操着だって高いんですよ」ってコメント来たのおもしろいな。思いつきもしない視点だった。

物を盗めば相手に損害を与えるのは当然だ。それを今日にいたるまで自覚しなかったのだとしたら、彼が思う加害性っていったい何なの?

 

アクティブな加害歴

タイトルには「内なる加害性」とあるけれど、彼の加害性は明らかに内心にとどまっていない。小学校ではクラスメイトの楽器につばをつけてまわり、中学では交際中の女子生徒の体操着と下着を盗み、高校では別れた彼女が別の生徒と付き合いだしたことを攻め立てる長文のメールを送りつけて拒食症に追い込み、弱ったところで毎日お菓子を焼いて届けて気のある素振りを見せ、相手の心を掴んだところで手酷く拒絶する。

 

どう見ても彼の加害性は行動化しまくっている。これでなお記事の冒頭にあるように「いい人、性欲なさそうな人」と思われ、常に優等生として通っているのなら「自分の内なる」ではなく「自分の裏の加害性」がぴったりだと思う。

 

過去のエントリーに「自分は要領よく生きられない」と書いているが、こうして欲望のおもむくままにやりたい放題やってきて、なお社会的評価に傷がつかず、モテるというのはものすごく要領よく生きているということだから、そこは自信を持っていい。

 

大学生くらいで「いい人に見える俺のワルだったころ」を語りたくなる気持ちもわからなくはない。しかし彼に知ってほしいのは、性衝動は暴力ではないが、他者の私的領域に強引に侵入すること、また自分の私的領域を強引に受け入れさせることは暴力だということだ。

 

性衝動と暴力の混同

彼はその後、盗撮もの、レイプもののAVにはまる。他者の私的領域を侵害する形で興奮を得てきたことを考えるとこの流れはごく自然だと思う。彼自身はそれを性的に潔癖だった家庭で育ったせいではないかと書いているが、レイプ、盗撮、痴漢など暴力性のあるAVは日本でたいへん人気があるので、手に入りやすいという理由もあるんじゃないかと思う。海外留学でお盛んなダイナマイトバディの姉ちゃんがせまってくる系のAVに囲まれていたらどうなっていたか興味がある。

 

性犯罪を憎む女性であっても性犯罪に関係したポルノに興奮する人は少なくない。だってそれがポルノの力だもの。直接的に、煽情的に、背徳感は覚えても罪悪感は覚えずにすむように作るのがポルノ。じゃなきゃ売れないでしょう?売りものなのよ、あれは。*2

 

その辺の区別がついていないからなのか、彼は自分のヰタ・セクスアリスを自分の内で肯定できない暴力の歴史だと思っている節がある。彼の性衝動による暴走は確かに暴力的だ。しかし問題は彼の性衝動の強さではなく、彼がそれを満たすために他者の領域に平気で侵入しているという点だ。

 

意中の人が使ったリコーダーだろうが体操服だろうが下着だろうが偏愛するのは誰に咎められることではない。どこでも好きなところを舐めて突っ込んでやりたいようにやればいい。ただし相手の合意が得られるならね。

 

別れた女の交際にぐちぐち口を出すのはろくな男じゃないけれど、拒食症になった高校生の彼女はこうしたプライバシーの侵入を拒否できない子だったのだと思う。そして彼はそんな風に他人と自分の境界線があやふやな女性を見つけるのが上手い。

 

「重い話」が嫌がられる理由

彼はこのあと「もはや自分が潔白な存在になることは無理だということがわかってしまいました。自分の欲望の中には、昔からどうしようもなく加害的な側面が存在してしまっている」ことを自覚する。よかったね!

 

しかしそんな自分を一人で抱えきれず、「誰かに全てを話してしまいたい」「受け止めてくれそうな人にしか言いたくありません」「しかし僕にはそんな友達はいない」ということで、自分を優等生として認める人の輪に影響しなさそうなところから「派遣のバイトで知り合った某音大の3つ下の女性」「変わった人」「1、2時間くらいしか話したことが無い仲」に白羽の矢を立てる。

 

ここからこのエントリーは俄然サイコホラー風になる。

 

彼は「誰にも言ったことのないコンプレックスを話したいので大学の屋上で夜中に話をしましょう!」とメールを送る。ふつう女子大生はよく知らない男から重い話を聞いてくれと深夜に他校の屋上に呼び出されたら警戒する。これを受けてやってくるのは相手に気があるときか、のっぴきならない事情があるときか、自分を守る力が弱い子のどれかだ。

 

結果的にこの子は実の兄から性暴力被害を受けていた子で、いまも頻繁に痴漢に遭うということだった。彼が彼女を選んだのは偶然ではないとわたしは思う。境界を侵害されなれている子だったからこそ「受け止めてくれそう」だと思われたのだと思う。

 

自分を取り巻く人間関係に影響しない相手に自分の裏の顔を吐露してしまいたいという気持ちは誰にでもある。精神科医やカウンセラー、飲み屋のママやマスター、通りすがりのチャット相手にそれをやる人もいる。 

こういった仕事は一般的にストレスが多い。人の重い話を聞かされるのは専門家であってもキツい。親からこれをやられる子供は屈折する。本来それは安定した大人が、互いを共有できるレベルの親密な関係の中で、愛と信頼に基づいてなされるべきことだからだ。

 

それが性的な話題であるなら特にそうだ。人は性に関する話題は距離をコントロールできる状態で、信頼できる相手とだけわかちあいたいと思う。それを超えるのはセクハラだ。

彼はそれを年下の女の子に数時間ぐずった末に膝枕をさせ、毛布を被り、泣きながらやった。こんな状況に飛び込んでくるうかつな子が、それを拒絶して話に耳をふさぐことができただろうか。そして丸腰で性暴力について聞かされる自分に及ぶダメージを予測できただろうか。

 

無自覚な暴力性と加害できそうな相手を見抜く目

彼は自分の告白に応じて彼女が語った生い立ちから、彼女が性暴力の重い傷にいまだ苦しんでいることを知った。

 

そこで彼はこれまで自分自身が傷つけてきた女性たち、楽器が不自然な場所にあって不気味に思ったり、体操着や下着を盗まれたり、嫉妬心から彼氏でもない男にトラウマを植え付けられ、青春を台無しにされた少女たちが受けた傷がどれほどのものか、自分がしでかしたことの大きさと深刻さを思い知った。

 

ということはまったくなかった。*3

彼女がいろんなことを「仕方がない、仕方がない」と我慢してきたその力で、僕は自分の欲望の中に加害的な側面があるというコンプレックスを赦されたのでした。

まさかの展開。

性暴力や性犯罪をも「仕方がない」と我慢してきた彼女にとって、僕のしょうもないコンプレックスの告白を、「それは仕方がないことだよ」と受け止めることは、とても簡単なことだったのではないでしょうか。僕にとっては、それが救いになったのでした。

彼女がうけたのは性暴力と性犯罪だけど、おまえのやったことも性暴力で性犯罪だから、その辺しっかり覚えておいたほうがいいぞ。

学校に部外者のおっさんが侵入して同じことをやったら間違いなく捕まるだろ?おまえがしたのはそういうことなんだよ。おまえの中では「しょうもないコンプレックス」でも、おまえは捕まらなかっただけで性暴力と性犯罪をやらかしたんだよ。そこ勘違いしたらダメだから。大人の万引きと子供の万引きは扱いが違うだけで、窃盗は窃盗だから。

もう大学生だからその辺わかってるだろうと思って読んでたよ。思ったよりバカなんだな。

 これを一番乗りにファボって人が集まってきたら消したのな。要領いいな。

訂正:消えていなかった。

 

性嫌悪とは何か、よく考え直せ

意に染まない相手から自分を性の対象にされて嫌悪感を抱くのはあたりまえ。知り合いを想像の中で蹂躙することに抵抗があるのもあたりまえ。「男は誰でも女を抱きたがるもの」「知り合いをおかずにするのはふつう」を前提に考えてるからそうじゃない自分を性嫌悪だなんて思いこんでるのかと思って読んでいたけど、おまえよばわりで悪いけど、おまえさ、まだ自分を潔癖な人間だって人にアピールしたくてたまらないんだろう。

 

ごく当然の下心の暴走をこんなにも咎めて悩んでしまう俺、年下の女の膝枕で毛布にもぐって泣き崩れてしまう俺。そんなにもピュアな俺を3000人のフォロワーに知ってほしくてたまらなくて書いたんだなと思ったよ。

 

おまえのちびっこ変態行為に関してはしょうがねえなとしか思わないけど、おまえがいまだ人の領域を侵害することに無自覚で、おまえが傷つけたのと同じように傷つけられた女の子を前に「出来ることは何もないけどがんばってほしなあと思います」なんて他人事のように書いてるようじゃ、将来が心配だわ。

 

誰だってムカつくやつは酷い目にあわせてやりたい。好きな人は自分が望むような関係に持ち込みたい。その衝動が敵から身を守り、愛する人と共存する力になる。その衝動を制御しないで暴走させることが暴力を生むんだろ。

 

金が欲しかったら稼げばいいんだよ。おまえがしたことはスリや詐欺みたいなもので、彼女が兄からやられたことは強盗。お金が汚いかどうかじゃないの。

 

話に出てきた子に許可とって書いて一緒に勉強していきたいと思ってますってTwitterに書いてたけど、「その子がいいと言ってるから」で覚悟もなしにずんずん境界を侵害して高校の時の彼女の二の舞にしないように気をつけな。本当に。

 

こういう性欲と腹黒さを若く純粋な被害者に膝枕で慰めてほしい人は多いだろうから肯定ブコメは増えるだろう。加害者擁護の構造をみたと思ったよ。

 

追記

僕は「暴力的なレイプ物」を消費しているとき、完璧に女性差別しているよ。何か... - 表現規制問題 - araignet2 - はてなハイク 

ネット雑談。 - ちゃずけのきろく ちょいちょいあるんだな。そして注意ですむのか。

 

続報

kutabirehateko.hateblo.jp

d.hatena.ne.jp

*1:いまは何だろう?

*2:結果的に同じ目的で使われるとしても、性犯罪がテーマであっても問題と真摯に向き合う作品とおかず路線とは全く違う。「ロビンソン・クルーソー」と横井庄一の手記ぐらい違う。

*3:こういう自分に都合のいい無神経さを発動できる人間は間違いなくモテる。