モテと婚活と貧困ビジネス

 

若い子は所得の点で高望みしないし、子供も産めるから自分を相手にしてくれそうだ」と思っているアラフォー男性の非現実的な期待について書いた。でも結婚に非現実的な期待を持つのは男性の特権ではない。ただ結婚に期待する内容は男女で違いがある。わたしは結婚に対する女性の非現実的な期待を煽っているのはモテ本の影響があるんじゃないかと思う。

 

恋愛や結婚を望む女性をロマンチストの夢見る夢子ちゃんだと思っている人がいる。「女は愛されることを何よりも望む生き物だ」とかね。でもある人たちがモテ指南を追い求めるのはものすごく現実的な理由、つまり社会から庇護してくれる相手がほしい、貧困をどうにかしたい、ということだ。

 

婚活女性の期待

女性の「そろそろ結婚したいんです」の枕詞でわたしがいちばんよく聞くのは「仕事を続けることに疲れたので」。

これまでなんとか働いてきたけれど、老後暮らせるほどのお金は稼げない。だから結婚して生活を安定させたい。でも「仕事、仕事」で家のことはほとんどやってこなかったから、家事には自信がない。アラフォーで結婚を望む女性にはこういう人がけっこういる。

 

しごくもっともな気もするけれど、「その結婚、相手にとっていいことありますか?」と聞きたくなる話をする人もいる。「料理は親がやっている。家事は苦手で片づけが特にダメだからそこはアピールできない」*1「身体が弱いから仕事には就けない、子供も望まない。家事は苦手だから分担してほしい」という人は多い。 *2いちばん衝撃的だったのは「事業をはじめたいが成功するかどうかわからない。だから結婚して生活は夫に支えてもらいたい。仕事に打ち込みたいから家事は共同で、子供は望まない」という人。*3*4

 

 でもモテ指南はそういう人に「まず家事能力と経済力を身につけろ」とは言わない。「男性は愛する女性のためなら何でもしてくれるもの。だから愛されましょう」という。それでそういう人はモテ指南にはまる。年齢なんか関係ない、愛があれば大丈夫だとモテ本はささやく。

 

そんな全年齢にやさしいモテ指南だけど、モテ指南とは要するにトロフィーワイフを探す見栄っ張りな男に、見栄えがよく御しやすそうな若い女のふりをして見せる方法だ。若い女に擬態する路線はアラサー過ぎたら勝ち目がない。本物の若い女が土俵にいるからだ。*5だからアラサーに入ったら、若いうちに簡単に身につかないようなことだとか、他の誰でもない自分だけの売りをもつことにシフトチェンジして、若さを求める男性からは身を引いたほうがいいとわたしは思う。*6

 

もちろんモテ指南はそんな冷水を浴びせるようなことは書かない。「誰でも」この方法を実行すれば結婚できます!と断言までする。*7モテ指南を読む人の多くは自分を重労働と貧困から開放してくれる白馬の王子を探している。だから、王子が見つかる方法だったらお金払ってでも知りたい。たとえそこに全財産つぎ込んでもあとで王子が補填してくれればいいわけだしね。*8

 

「男は女を貧困と労働から救うもの」と仄めかすモテ指南の功罪は大きい。男性は「女は男を立てるもの、癒すもの」とうたう女性に目尻を下げている場合ではない。自分も男である以上、そうした女性に立ててもらえる対象だと勘違いする人がいるが、そういう女性が望むのは「甲斐性のある男」つまり金、労働力、気遣いのある男で、見返りのない男はそもそも男ではない。*9

 

モテ指南の男女観はびっくりするほど封建的で男尊女卑的、女性蔑視的だ。それを寵愛をうける美姫と力ある皇帝になぞらえているだけで、「女は男に守られなければ生きていけない」「女を守れない男は男ではない」という思想が根底にある。

 

衣食足りて栄辱を知る

モテ指南が貧困女子を対象とした貧困ビジネスだと考えると、非モテ低所得者を排除しようとする理由が理解できる。*10目的は脱貧困であって、気のあう人と伴侶になって楽しくやることではない。「貧乏暮らしならひとりのほうがまし、コスパが悪い」ということだ。

 

モテを指導する人は高価なプレゼントや豪華なデート、自分にかしずくパートナーの話を成功例として書く。そうして「男に愛される女になれば、この労働と貧困から解放される」という期待を読者に抱かせる。そうやって大胆に欲に訴え、現実的なパートナーシップから目をそらさせ、相手を夢中にさせることを究極の幸せのように書き、大義名分で人を欺くことを正当化する。

 

実際には結婚生活とは家族を作っていく地味な日々の連続だ。これはこれで面白いけれど、自分のモテぶりをアピールして男をつぎつぎ釣り上げる機会はないから、モテに特化した人には退屈じゃないかと思う。またパートナーシップとは愛していても出来ることと出来ないことがあることを学ぶ場でもある。相手の反応で愛されている、いないと一喜一憂していてはもたない。

 

バブル期の女は自分を高値で売って贅沢を楽しんだ。*11でも不況の女は生活のためモテを夢見て男にすがる。多少の我慢は結婚でペイできると考える。溺れているから藁を掴む。

 

こういうグラフを見ると女性がモテにはまるのって笑えない。他人事じゃない。

 

 

kutabirehateko.hateblo.jp

*1:男性にも多いが、男性の場合は相手に養ってもらおうとまでは思っていない。

*2:要するに保護者募集。

*3:パトロン募集したほうがいい。

*4:個人的には家政夫でも保護者でもパトロンでも自由に望めばいいと思うけど、合致しない男性を腐すのはどうかと思う。

*5:年相応に期待されることも違う。

*6:「東京タラレバ娘」を見ていて強く思うのはこれ。

*7:そして小さく「すべての人に同じ効果が出るとは限りません」と書いていたりする。

*8:結婚をゴールにしないモテ指南も男に愛されることが多くの問題の解決策だとモテを過剰に礼賛しているところは同じ。

*9:「毒婦。」を読んでつくづくそう思った。

*10:「全額奢らなかったら切れ」とか「絶対に会いにいくな、会いにこさせろ」とか言い張る「ルールズ」。

*11:ちなみにバブルを謳歌した女性は現在アラフィフです。