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「神さまが教えてくれた、しあわせに愛される女性になる秘密」に見られるモテと封建主義

 

 

井内由佳は大山ねずの会から派生した富士和教会福岡支部の支部長で、木花咲耶姫のお告げとするメッセージをもとに人間関係や仕事、お金に関する本を多数出している。井内は幻冬舎から出したデビュー作「わたし、少しだけ神様とお話できるんです。」の中で、流産の経験を書いている。そして流産の原因は「自分が舅姑に対して嫁として可愛げがなかったからだ」と書いていた。

 

わたしは変な仕事の方で子供を望む方々によくお会いする。医学の力をもってしてもなお子供は授かりもので、安産のお守りや各地の民間伝承、迷信と呼ばれる類のものまで必死に頼る人が大勢いる。

わたしはそういった水木しげる的な不思議パワーはこの世に存在すると思うので、荒唐無稽な話であってもそれで効果があればいいなと思う。受胎が奇跡ならその過程に何が影響するかわかったものではない。

 

けれども流産の原因は嫁の可愛いげのなさだという封建的でねじくれた道徳観で女性に罪悪感を抱かせるのはどうかと思う。こういう話を真に受けないでほしいと仕事のブログの方に書こうと思って井内の本を何冊か買って読んだ。以前書いた恥ずかしくて奇妙な本とは井内の本のことだ。

恥ずかしくて奇妙な本への疑問 - ハイク以上はてダ未満

 

それが神さまかどうかは別として不思議なお告げの力がある人はいる。わたしはそう自称する人のすべてが空想好きなホラ吹きだったり、精神疾患を持っていたりするとは思わない。けれどもお告げを自称する人が自分で考えているにせよ、告げている何かが言っているにせよ、真に受けることに注意が必要は話はある。平常で人はそんな話は真に受けない。でも溺れているとなれば別だ。溺れている人に掴んだものが藁かどうかはわからない。藁じゃないかもしれない、だとしたら助かると思えば信じたくもなる。

藁売りと溺れる人 - ハイク以上はてダ未満

 

野良稼業が経済を動かしている

こうした悩める女性に人気がある商売の話題が少し前にホッテントリいりしていた。

webを利用して勤めをやめたり、副業をはじめたりするのはブロガーばかりではない。わたしが思うガチでやばい系の仕事はこういうものだ。ブログの書き方指南なんて語句良心的なものだと思う。

火事場の野良稼業 - ハイク以上はてダ未満

 

衣食には困らないけれど、気軽に人に話せない深刻な悩みを持った女性は大勢いる。もちろん男性もそうだと思うが、建前として「結婚や出産で心悩ます女は自立できていない」と言われがちだ。ある意味で「結婚して子供がほしい」と人に明かすのは女性にとって男性より難しい時代なのではないかと思う。

結婚しているけれど子作りが上手く行かないという人にもよく会う。前段階としてセックスが楽しくないけど高額な体外受精はしたくない。妊娠を別にしてもセックスをもっと楽しみたい。こういう話題もやはり女性は表立ってしにくい。

こうした背景を知ると、膣や子宮を神格化して語りかけ、その様子を人から聞いてもらうことに諭吉を何人もつぎ込む人をわたしは笑えない。せめて自分と縁のある人にはもっと別な提案が出来たらと思う。

 

 井内由佳が「いいこといってる」と思われる理由

amazonでの井内本の評価は高い。前にも書いたが批判レビューを削除しているせいもあると思う。しかしもう一つの理由は井内本の価値観が戦前の道徳に近いせいだと思う。

「親をたいせつに」「人のことを思いやる」「してあげる、ではなくさせていただく」「感謝を忘れない」など、確かにいいことが書いてある。「いまの時代に忘れられがちな大切なことが書いてあります」とレビューがつくのもわかる。

しかし夫婦のあり方について「婚家の親をまず一番、次に夫。その次が実家の親、最後に我が子、そして自分。この順でなければ神さまは女に味方しない」という話になるとちょっと怪しくなる。

井内は恋愛本の中でも「親が反対する結婚は、よしたほうがいい」という章をもうけているが、いかなる事情であっても親孝行しない人間の末路は悲惨なものだということをどの本でも繰り返し書いている。どの話も「神さまによると」「だそうです」と伝聞形式で、悲惨な結末については自分が実際に見た話が多い。

 

井内は「女性も仕事をもつべきだ、家にこもっていてはならない」と書いているが、最近出したビジネス書は「わたしが神さまから教わった成功するビジネスパーソンの新流儀 」と銘打ってあるものの、本の内容は基本的に男性を対象としたものだった。そしてその本の中でも「女性はいずれ結婚で仕事を辞めるが男性は違う」と書いている。男は外で働き、女は家で舅姑に仕え、子供を育てる。井内の本はどれもこうした価値観がベースになっている。

男に威張らない、浮気の詮索をしない、こまめに身の回りの世話をし、怒らない。こうした女になれば本命として選ばれるというのが井内の恋愛本の主張だ。

井内の支持者には男性も多いが、以下のレビューにこういった古風な価値観を女性に期待する男性の気持ちがよくあらわれていると思った。

 

5つ星のうち 5.0 男性が読んでも、気持ち良く、頷かさせてくれる本です!, 2014/12/16
投稿者 
 
レビュー対象商品: 神さまが教えてくれた、しあわせに愛される女性になる秘密 (単行本)
井内由佳さんの書籍は、ご縁があって、今まで全ての書籍を読ませていただいてきたので、この書籍は女性のための本とわかっていましたが、手に取らないわけにはいきませんでした。
1冊だけ買うのも恥ずかしかったので、母・嫁・娘たちの分も6冊大人買いして、自分は密かにあっという間に読んでしまいました。
男性にとっては、こうしなさいということは書いていませんので、女性のあるべき内容には気持ちよく頷きながら楽しみながら読みました。
しかし、読んでいる間に、他人ごとではないことに気付き、これは本当に娘たちも知っておいた方が良いことだと思い知らされました。
特に、嘘をつく男性と暴力を振るう男性は、いけないのだと認識した次第です。娘がDVの男性と付き合うことがあったら断固として阻止しないといけません。
また、男性としても、女性がこの本に書いてあるようなことを実践してくれたら、ちゃんと受け入れてあげないといけないこともわかりました。まあ、既に結婚しているので、対象は妻となりますが、妻が実践してくれれば応えられる夫になれるよう努力します。
今晩、妻の枕元にこの本を置いておきましょう。乞うご期待!
 

 

封建社会の温存とモテ

井内が描く「古風な女」とは言い換えると「男に都合のいい女」「婚家と親にとって都合のいい女」のことだ。井内は「ビジネスパーソンの新流儀」の方で「昔気質の男」を想定して書いているように思う。ここで言う「昔気質」とは既得権益を得ている層に逆らわず、政治的な主張や属する業界で改革を望まない「義理堅い」男のことで、生意気に楯突く男は神から見放される。

 

こういった価値観はどこから来るのか。井内に語りかけてくる「神さま」がいるなら、その神さまの封建主義ぶりは強力だ。しかしわたしは彼女の価値観が男性社会、縦社会の存続に向く理由は、井内が熱烈に信奉する和丸斎さまこと富士和教会の現トップ、戸村和男によるものではないかと思う。戸村は昭和14年生まれ、母が作った宗教を受け継ぐまでは大手企業に長年勤めていた。

戸村に対する井内の心酔ぶりは井内が以前書いていたブログをアーカイブで読むとよくわかる。井内は四人の子供を持つ既婚者だが、井内にとって受け入れられるべき男性とは戸村のような価値観を持つ男性なのだと思う。

 

既得権益を持つ男性におもねること、これはわたしが目にした女性側のモテ指南にたびたび見られる特徴だった。こうした主張をする人が人間関係の秘訣として体制側、多数派に逆らわないことをしばしば説いているのも興味深い。

 

これが恋愛工学とどう結びつくかを書こうと思ったんだけど、長くなったのでいったん終わる。以上、今週のお題「読書の夏」に関するお話でした。

 

つづきはこちら。

kutabirehateko.hateblo.jp