不愉快な「かわいい」

モテ指南、ナンパ指南の極意は相手を人として見ていないのではないかという話を続けて書いている。アクセスを見ると需要0だということがよくわかる。でも考えれば考えるほどあれこれ腑に落ちてひとりユリイカな日々が続くのでまだ書く。

 

「じいちゃんはかわいい」

人を自分と同じ人間、尊厳と感情を持つ人物だとは思わないことで生まれる余裕がある。これは男女の仲に限らない。人だと思わないことでその人物の言動に心を乱されることがなくなり、社会的に毛嫌いされる存在であっても「かわいい」と思う余裕さえ生まれることがある。

 

夜勤で痴呆症の高齢者を担当することになった看護士のお嬢さんがいた。

体力のある男性介護士もいるとはいえ、昼夜逆転生活で身体の大きな大人をお世話するのはたいへんな仕事だ。しばらくして調子はどう?と聞いたら彼女は言った。

「うん、だいじょうぶ。じいちゃんたち、かわいいよー」

 

高橋留美子の漫画には妖怪と童子と仙人がいりまじったような、不気味かわいい老人がよく出てくる。乙女のような老婦人や、少年のように明るい老人にはきゅんとするようなかわいさがある。狙っているのか天然なのかわからない「bokete,jp」のようなつっこみ待ち発言もいい。しかし彼女が言う「かわいい」はそういうものではなかった。

 「わかりましたか?っていうと『はい』なんていうの。赤ちゃんみたい」

 

これは祖父が介護を受けるようになるずっと前の話だけれど、わたしは長い人生を立派に生き抜いてきた祖父が、学校を出たばかりの女性から乳児やペットを見るような目で「かわいい」と言われるところが頭に浮かんでぞっとした。

 

「眠れなくて深夜によくナースコール鳴らすおじいちゃんがいるんだよね。そしたら同僚が『私は負けない!』ってバッと立ち上がってダーッて出てったの。それでじいちゃんの点滴おちる速度をガッと上げてきてさ!じいちゃん速効で寝たよ」

彼女はニコニコ笑った。点滴には睡眠薬が入っていた。それが医療的にゆるされる行為だったのかどうかわからないけれど、彼女はちょっとしたいたずらをやり遂げたような調子で言った。

 

彼女の話を聞いていると、病棟にいるのは人間ではなく大型動物かなにかのように思えてくる。訴えは「なんか言ってる」であり、「わけわかんないけど、ちょっと人間っぽくて笑える」。だからかわいい。

 

「大丈夫だよ」と笑う彼女の顔には誇らしさがあった。わたしはボケ老人を差別したりなんかしない。大事にかわいがっているんだよ。

 

「理解できないお前も可愛いと思えるようになってきた」

もうひとつ「かわいい」の話。

35名無しさん@おーぷん :2015/07/03(金)03:45:54 ID:yY0 ×

初めての書き込みなもので勝手がわからないのですが昨日元彼から送られてきたロミオ晒す
実際は改行なしの絵文字満載です

久しぶり。
まだ臍曲げてるんですか~?(笑)
あいつらは人間未満、嫉妬する価値もないっていうのが解りませんか?
はちくび(原文ママ)って言葉知ってる?
女の体をした赤ん坊のような純粋な存在、それを愛でる事の何が悪いのかが解りません。
怒ってるわけじゃないよ。
理解出来ないお前も可愛いと思えるようになってきた。
不安だろうけど無知は悪い事ではない。
また一緒に過ごせば理解する助けをしてあげれると思う。
一緒にかれらを愛でる事だってできるはず。
今度の日曜、待ってるね。

以上、知的に障害がある女性複数との浮気が判明して先月別れた元彼より
36名無しさん@おーぷん :2015/07/03(金)03:58:27 ID:yY0 ×
補足

メールで分かるとおり、自分では無差別主義ぶりつつも障○者を見下している奴でした。お付き合い()している女性の親御さんが彼宅に怒鳴りこんできて判明、浮気相手が複数いたことと彼の「頭足りない奴じゃなきゃ興奮しない」発言に冷めて別れました。
妊娠や性病などはなかったものの、彼いわく「なんでもしてくれるお人形さん」として扱い、「これが普通だ」と相手に思い込ませてアブノーマルなプレイをしたりペット扱いしたりと酷い扱いをしていたようです。
相手親御さんのや彼親はどちらかというと純愛(だが相手がしっかり恋愛と認識して自分の意思で
付き合い始めたわけじゃないのでそれはいかんだろというスタンス)と思われている様子ですが、別れ話の最中に私に長々と語った「彼らと付き合うメリット」は晒すのもためらわれるくらい差別に満ちたものでした。
彼母いわく、元彼は相手両親の前でもうっかりそういう発言をしボロを出しつつあり、昨日親御さんから「被害届」の言葉が出たそうです。

ロミオメール 2

 

元彼は知的な障碍を持つ女性のことも、投稿者のことも、自分と対等な人間だと思っていない。だから相手の怒りやショックでダメージを受けない。何らかの理由で自分より劣っているとみなす相手に「かわいい、かわいい」と聞えよがしに言う人にはある種の誇らしさがある。「みんなは気持ち悪いと思うよね?近寄りたくないでしょ?でも自分は違う、かわいいって思うんだよね!」彼らは自分のことをふつうの人よりも寛大でやさしい人間だと思っている。

 

もちろん口汚く相手を罵ったり、家畜にさえやらないような暴力をふるうよりましかもしれない。でも、これは相手を尊厳と個性を持った人間として見ていないという点で、老人や知的な障碍をもつ人たちを一律「気持ち悪い」と言う人たちと同じだ。

 

かわいいカフェオレ

こうした不快な「かわいい」の対象は知的能力以外にも向けられる。黒人差別、女性差別を描いた 映画「カラーパープル」の中にもこういう「かわいい」が出てくる。

子供を連れた黒人の女性と白人の女性が通りを歩いている。白人の女性は黒人の子供たちを見て感激し、パッと手を出して子供を引き寄せる。

「まあ、なんてかわいいんでしょう!家で働かせたいわ。二人揃っていた方がいいわね」

白人女性の顔は善意で輝いているが、見ず知らずの女性の子供を同意も得ずに連れ去ろうとしているのだ。黒人女性は怯えて泣き出す子供を守ろうとするが、白人女性に抵抗したことで批難され、投獄されてしまう。

 

こうした差別はそれほど遠い話ではない。ティム・ガンは若い頃にボスだった女性の差別発言を本に書いている。

ティム・ガンのゴールデンルール

ティム・ガンのゴールデンルール

 

 「受付には カフェオレを置きましょう」

 「なるほど、そうすればお客様方もコーヒーを飲んで待てますね」

 「コーヒーの意味もわからないの?私はね、黒人のハーフのことを言っているのよ。ハワード大学で英語学を学んだ、かわいらしい子がいいわね」

 私はあぜんとしました。70年代によく耳にした、失礼極まりない人種差別的発言です。 

 ティム・ガンのゴールデンルール p71より

 

かわいい女になりなさい

うまく言えないんだけど。こういう関係の中で誰かに「かわいい」と言ってもらうために必死になるのって、ある意味で顔真っ赤で嫌われるよりひどい。もちろん自分を人とみなさない相手が怒りだしたら何をされるかわかったものではない。好かれていた方がいい。だけどそもそもそんな風に顔色をうかがい続けなければいけない関係にはできることなら入りたくない。

 

「自分は無知で無力であなたより劣った卑小な存在です」

「ですから偉大なるあなたを尊敬し、とても好意をもっています」

 

パートナーシップを築くテーマの本に「男性にこういうメッセージを送りなさい、そうすればかわいがられます」というようなことを書いている人を見るとげんなりする。それはパートナーシップの築き方ではなく、怯える奴隷の生き方だと思う。

 

不出来な夫を「大きな子供だと思えばいい。息子だと思って扱えば腹も立たない」という人がいるけれど、これも「かわいい」の一種だ。相手の得手不得手を理解して受け入れるのとは違う。内心自分を一段高いところに置いて溜飲をさげろという話だ。

 

結婚相手や恋人を探しているお客様によくお会いする。モテ関連がホッテントリ入りしていると使える話はないかなと思って読む。そうしたところで読んだものについて最近いろいろ考えているけれど、対等なパートナー関係を築くにはどうしたらいいか、ではなく、意思の疎通はとうてい望めない相手をいかに欺き、自分を都合よく売り込み、ストレスに耐えるか、という話ばかりが目につく。これは使えない。こういう関係に入ってしまったお客さんの悩みもずいぶん聞くからな。

kutabirehateko.hateblo.jp

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