失恋ショコラティエ最終巻で考えるモテ農夫の孤独

今週のお題「読書の夏」にエントリーしました。

漫画喫茶で書いた続き。

漫画読まなずにブログ更新してるなんて病気なのかなって思う。

 

「魔性の女、悪魔のような男と呼ばれるレベルのモテ人間って、人を人じゃなくてキャベツかなにかのように思ってるんじゃないか」という仮定で「失恋ショコラティエ」の最終巻について語っています。最終巻のネタばれ含むというか、「結末だけ知りたくてネタばれ検索してきた」という方向けなので、それでいい人だけ続き読んでください。

前回の話はこれ。

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同棲不倫を終わらせたサエコとソータ

前回書き落としていたけど、夫婦喧嘩をきっかけにソータの店の二階に転がり込んでいたサエコは妊娠していた。「まさか(自分との…)」と驚くソータに、サエコは突き放すような調子でもちろん夫の子だという。そしてとつぜん不倫蜜月を終わらせる。ほんと「そろそろ帰るね?」くらいの説明だけで、「まさか本気でいるとか思ってなかったよね?もちろん」という空気を作り、ソータを黙らせる。

 

部屋を借りて一緒に暮らそうと伝えるつもりだったソータは「本気になっていたのは自分だけだったのか」と冷水を浴びせられたかのようなショックを受けて急激にテンションが下がる。そして「そっかー、だよねだよね。じゃこれチョコ。お土産ね、元気で」と悲嘆を隠して笑顔を作り、サエコを見送る。

 

「んだよ、けっきょく飽きたらポイかよ!」となるところだけど、なんかサエコがすげーさみしそうに描かれていた。サエコは思い詰めた子供のような顔でふいに何か言おうとするが、ソータはそれに気づかないま二人は別れた。

 

夫との再会

で、最終巻。サエコは夫を田舎のばあちゃんちへ呼び出し、ずっとばあちゃんちにいたとアリバイ工作をする。頭が回る人だね。呼び出された夫は激怒しているが、ひとまずサエコのアリバイには納得してしまう。

 

「さっさと帰るぞ!」と乱暴にサエコの腕を引く夫に、サエコは今後二度と暴力をふるわないと誓うように迫る。夫はそれと知らずにソータがサエコのために作った特製チョコセットを食べたことでサエコと喧嘩になり、そのときサエコを突き飛ばした。

 

「そんなんいっかいだけじゃん!」「回数の問題?!」「ぐぬぬ」というやりとりのあとサエコは妊娠していることを告げる。途端にデレはじめる夫。サエコは「赤ちゃんがかわいそう!」と子供を盾に、父として以後二度と暴力をふるったり脅したりしないと誓わせる。

 

サエコの孤独

いやー。わたしだったら疚しいね。疚しいなんてもんじゃないね。

まず不倫のアリバイ工作するのが疚しいけど、それにばあちゃんを巻き込むのはばあちゃんに疚しい。*1

自分に夢中な男のお手製チョコを夫と暮らす家で食ってたことも疚しいし、それを知らずに夫が食べて「うまいな!」なんて言ってたら胸が痛む。雑巾のしぼり汁をお茶だと思って飲んじゃってる!みたい気持ちになる。夫がせっせと働いた金を不倫の資金にしてるんだな、と思ったら自己嫌悪に陥る。それが平気なのはラリ状態まっさかりのときか、敵意と復讐心に燃えているときだ。サエコはそのどちらでもない。

 

だから、夫が知ったらただじゃすまないようなことをしておきながら、お気に入りの人形を勝手に触られた女の子みたいにまっすぐな調子で夫にキレるサエコの神経がわからなかった。妻がキレたら暴力暴言で押収する夫は糞だなと思うけど、気持ちはわかる。こういうおっさんが何を考えているのかは不倫棚上げで思い詰めてる人妻の気持ちより共感できる。

 

しかしサエコは旦那をデカいキャベツくらいにしか思っていないのだと思うと理解できる。騙すも騙さないもない。キャベツに話は通じない。夫は歯の生えたキャベツなので、噛まれないよう、扱いには十分注意しなければならない。夫がキレるようなことは教えない。好意だけでなく負い目を持たせ、行動を抑制する。妊娠中は胎児を盾に取る。

 

夫のような取扱い注意のキャベツと暮らすことをあえて選ぶサエコは離婚によるダメージが結婚の継続より大きいと考えているのだと思う。言い換えると、夫と暮らすよりいい生活がイメージできないということかもしれない。味に微妙な違いはあっても世界には自分とキャベツしかいない。

 

言っても仕方がないから言わない。理解しあって愛し合うなんて不可能だから考えない。結婚生活の不安や気になる相手がいること、そういう心の揺れをキャベツに話して理解されると思えない。キャベツには自分の気持ちはわからない。

 

広大なキャベツ畑の真ん中で、ジョウロを手のして寂しそうに突っ立っている女の子。

モテ農夫の心象はこういう感じなのかなと思う。モテの国はやっぱり谷山浩子っぽいシュールなところだ。

 

 

ここで終わると絶望的なんだけど、これと対照的な場面がこのあとあった。

長くなったのでまたこんど。

 

 

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*1:ばあちゃんは登場しないので、実際には縁もゆかりもない田舎に呼び出した可能性もある。