いつもと違う夜


仕事を代わってほしいと要請があって、無理して出たら具合が悪くなってしまったので、もちおに仕事帰り車で拾ってもらった。

都市高速から見る海沿いの夜景がキラキラして、いつになく綺麗だった。「このままどこかへ行きたいね」と、もちおがいった。

(いやいや、わたし具合悪くて迎えに来てもらったんじゃん?わかってないの?)と思ったけど、もちおにとってしあわせってドライブにいくことなのかな…と、ひとまずそうだねと相槌をうった。

「なにか食べに行こうよ」

わたしもう考えられないよ。行くならどこへいくのか自分で考えてね。と、思ったけど、こういうことを言い出すもちおはやっぱり疲れていて、いつにも増してノープランなのはわかっている。いくつか提案して、決まらないままもちおの買い物を先にすませた。

「ああ、こうして一緒に歩いていると元気が出てくる」

わたしは横になりたい。それで迎えに来てもらったんだよ。と、いつもなら言う。けどもちおはしあわせそうだからいいのか。わたしも文房具買えたし。

「食事しようよ」
食費から出すの?予算は?いま現金の手持ちあるの?

「このモールのお店、いいとこないよね」
「そうだね。やめるか」
やめて、今夜の夕飯どうするの?わたしが作るの?

「映画が観たいな。借りにいこう」

この時間から?昨日も寝不足なのに?と、思ったけど、借りて気がすむなら途中で止めて寝てもいいし、と考え直してレンタルショップへ行く。

「わたし車で待ってていい?」
「じゃあやめる」

駐車場で引き返す。借りたいなら借りなよ、といつもなら言うところだけど、一緒にあれこれ見たかったんだろうなと思う。

結局食べるものはなにも買わずに帰った。キツい。夕飯どうするか考えてほしい。と、思ったけど、いまのもちおにはそれが無理難題なのは知っている。

わたしは妻で主婦だからではなく、疲れてお腹を空かせて料理が苦手で訳がわからなくなっているもちおへの愛情の表れとして、ご飯を作った。

もちおの家に遊びにいって、ご飯を作ってあげるんだと思えば、目の前のもちおが喜べばそれでいいんだなと思った。

大人だから、夫婦だから、計画性を持って今日のことを、将来のことを話し合って、それに沿って暮らしたいと思うと、今日みたいな日は激昂しそうになる。

でも、いいんだよね。別に。
ちゃんとしてなくても幸ある家庭になれたら。

今夜わたしがいつものように現状と向き合ってほしいと理詰めで話をしたらもちおは凹んだだろうし、それを言ったところで、言わないでいる以上にたいしていいこともなかっただろう。

こんなときに料理出来るかなと内心とても不安だったけど、なんとかなった。よかった。

「少し考えたらわかるはずなのにどうして」と色んなことに対してもちおにがっかりしたり頭に来たりしてきたけど、これだけわたしを愛していて、頭がよくて、仕事も出来て、親切でやる気があって、結婚して10年を越えて、出来ないんだから、よほどの事情があるんだろう。

そんな圧倒的な課題で時間をとるより、解ける問題を早く解いて、楽しくすごそうと思った。もちおはわたしのめちゃくちゃなとこ、全然気にしてないし、しあわせそうだからな。

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