おとうさんがほしいおじさん

こないだ婚約者のいる女性に告白された。

婚約者のいる身なんだし、わたしは人妻だし

それにお客様だったので

仕事のシステム上相手が女性でも男性でも進展しようがない。

ということで深く追求しなかった。

でも性的な意味でガチなんだろうな、という手ごたえはあった。

 

そして私は女性に告白されるのと

男性に告白されるのでは

私の中で何かが決定的に違う、ということがわかった。

とても長い間疑問に思ってきたことの答えが出た気がした。

 

好きな男性→嫌いじゃない男性→好きじゃない男性→嫌いな男性

という順序があるとして、

「好きな女性」

というのは、この中のどこにも入らないみたいだ。

同性に熱烈に恋焦がれることってけっこうよくあるのかもしれない。

それは性的指向とはまた違うものだと思った。

 

立川談春の「赤めだか」という本を読んだ。

これは師匠である立川談志との日々を中心に

談春が落語家になるまでの日々を描いた本で

「弟子が師匠を思う気持ちは恋愛にたとえると一番よくわかる」

と書かれている。

 

同じく談志の弟子である快楽亭ブラック

「弟子は師匠に惚れ込んでいる。ただただ師匠が好きなんだ」

と言っていた。

好きで好きで喜んでほしくて、焼もちを妬いて、拗ねて、一喜一憂して

確かに師弟愛って恋愛みたいだ。

 

でも、もっと似ているのは

親の気を引きたい一心の子供の気持ちだと思った。

「俺たちの渡世じゃ親が白いと言えば黒いカラスも白いんだ」

という台詞がヤクザものの小説によくあるけれど

落語の世界でもその言葉が何度も出てくる。

 

この本を貸してくれた友人はわたしの父に憧れている。

はてこ父の破天荒で豪放磊落なエピソードが大好きで

いつか会ってみたいと思っている。

 

彼は実の父親は母親と別れていて

なぜかこの人は自分の父のことをめちゃくちゃに言う。

ご尊父は酒も女も博打もしない、暴力も暴言も吐かない方で

家にお金をきちんといれて家族を養ってこられたとのこと。

でも「最悪」なんだって。「甘えてて」「情けない」んだって。

 

「赤めだか」を読んで

彼が憧れる父親像が見えた気がした。

父親に常識や勤勉さなんか求めていないんだろうと思う。

むちゃくちゃだけど、不思議と自分を見ていて、見抜いてくれる父

社会にたった一人でも立ち向かっていく父

日常的なことは家族に丸投げでいい

最終的に家族を背負って責任は全部とる覚悟がある父

ヒーロー

そういう父親がほしいんだと思った。

 

そういう父を求めて師弟の世界に入る人は少なくないのだと思う。

スポーツの世界もそうだと言っていた人もいた。

そう考えたら、会ったこともないわたしの父に憧れる友人の気持ちが少し分かった。

そして

温和でどこまでも辛抱強く忠義の見本みたいな祖父を

見下し、無視し、ときに目の敵にする父の気持ちも少しわかった。

圧倒的で強大な、超えられない父親であってくれ

情けない姿を見せないでくれと

父は70を過ぎてまだ90過ぎの父に地団駄を踏み続けているのだろう。

 

この人たちの父親のイメージを幼稚で非現実的だと笑うことは出来ない。

なぜなら

私もいまだに理想化された母親を姉を求めているからだ。

無限で無償の愛で私を保護してくれる

受け入れてくれる

教えてくれる

女として張り合ってきたりしない

自分にとってそんな女性がいないかとどこかで思っている。

だからつらいとき「おかあさんがいてくれたらいいのに」と思う。

実の母が「おかあさん」ではないことに身を切られるような痛みを覚える。

 

彼らがゴッドファーザーに心酔するのと 

私が昭和の主婦本や児童書に心酔するのは、似たようなものだ。

 

どういう形でかは知らないけれど

父も友人も父親に満たされていないのだと思う。

そりゃ酷いよ、あんまりだよと思うようなことを

この人たちは実の父親にするけれど

「いやだ、お父さんがほしいんだ」

という思いを否定することができない。

 

同性に惚れ込むというのは

独占したい、一番になりたいと気が狂うほど強く思うことはあっても

それは性的指向が同性に向いている場合の

パートナー関係を築きたい、セックスしたいというのとは

質がまったく違うことがあるんだなと思った。

 

異性に対してでも油断できない。

結局自分が相手に求めるのは異性の親であり

兄弟姉妹である場合もあると思う。

気を惹く手段、独占する手段として

交際したり結婚したりしてる人もいると思う。

 

どんな手段を使ってでもどうしてもどうしても

おとうさんとおあかさんがほしい

そう思っていて、気づかない人がいると思うし

「この人はおかあさん、おとうさんじゃない」

と思えてしまって、交際や結婚をやめる人もいるんじゃないかな。

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