疑惑の女友達

こんなわたしにも女友達といえる人がこれまで何人かいた。

たとえば近年で女友達といえば、と思い出した女性がいる。

でもよく考えたら彼女と白熱する議論なんか一度もしたことがない。

 

着物にはまっていた時期があって、ブログに書いていたらメールが来た。

面白い人だった。

やがてちょっとした物のやり取りをするようになり、彼女が地元に来ていたときに会った。

美人だった。

よく知り合いのことを紹介するときに

「すっごいキレイで~!」「超かわいくって~!」

と軽々しく書く人がいるけれど、そういう話じゃなく、誰も否定できないレベルの美人だった。

妻が世界一かわいいと信じ、マツコ以上に女性に厳しく、ティム・ガン並みの毒舌家の夫が

「ドンマイ」

と妻を慰めにかかるほどの美人だった。

美人と言われることに慣れていて、むしろもう触れないでほしいと思っている。

そういうレベルの美人だった。

 

やがてわたしたちは毎月着物で待ち合わせをしてお茶を飲むようになった。

彼女も家庭があったので時間は限られており、彼女の家から近い駅を選んで会った。

当時わたしの体力もかなり限られていたけれど、彼女から誘われたら一も二もなくOKした。

ほとんど一時間、長くても数時間だけ会っておしゃべりをする。

もうなにを話したのか覚えていない。

彼女は喫煙者で、わたしは煙草にアレルギーがあった。

でもわたしはよく風上に座って、遠慮がちに煙草を吸う彼女と並んでおしゃべりをした。

 

その後彼女は離婚して、実家に子供を残して同棲をはじめた。

最後に会ったのは彼女が恋人を連れて地元の町に来たときだった。

夫と4人で駅ビルのカフェでお茶を飲んだ。

まとめ髪に着物だった彼女はTシャツで髪を下ろしていた。

わたしは彼女の恋人が好きになれなかった。

二人が付き合った経緯も賛同できなかった。

でもそんなことはおくびにも出さず、なあなあのお茶の時間を過ごした。

 

わたしは彼女が大好きだったけど

それはわたしが思うところの”友達”というのとは違ったんだといま思う。

彼女と会って別れたあと、よく駅の構内をぼんやり歩き回っていた。

とり残されたような、つかまるものがないような、心細い気持ちで。

 

彼女とはいろいろな話をしたけれど

自分の考えたこと、悩んでいること、思ったことをあれこれを話そうと思ったことがない。

もちろん話したと思うんだけど、うまく言えないけど、それは社交的な話題だったと思う。

彼女と過ごす時間は意見を交換することじゃなく

彼女とただ一緒にいることが大事な時間だった。それで満足だった。

女学生物の小説に出てくるSってああいうのかなと思う。

共通認識じゃなく、ひっそり思っていただけだったけど。