天からのエリン・ブロコビッチ

推敲しない。

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わたしの貧しい思考能力では父を討つ以外の解決策が浮かばなかった。

それしかない。生涯二度目の真剣な殺意を抱えて朝が来た。一度目は中学2年の時だ。

14歳のわたしが思った手段は刺殺だった。生々しくその場面を想像して思った。無理だ。

自分にその力がないことを心底情けなく思った。わたしに母は救えない。力及ばず、わたしは母の離婚に同意した。

 

不本意な圧政に引くこと、応じることは敗北だ。わたしは敗者だということだ。

しかし夫はそう考えない。

勝つこととは最終的にこちらが望む状況を手に入れることだと夫は思っている。

こうしてわたしは28年ぶり2度目の殺意を昇華する足掛かりを得た。

 

祖父が天寿を全うする日が悲惨なものであるならそれは自分のせいだと思った。

わたしが祖父を父から守りきれなかったらそうなる。

父は、わたしと夫の目の前で祖父に対して許し難い言葉をいくつも口にした。

わたしは父にそれを許したのだからわたしは父の共犯だと思った。

比喩ではなく文字通り眩暈がして手が震えた。討つしかないと思った。進歩がない。

 

今朝、煮えた頭で起きた。下腹全体と胃が痛くて眩暈は酷くなっていた。シャワーヘッドを握る手が震えていることに気が付く。

仕事の電話をかけるが、尋ねられた自分の電話番号がわからない。ろれつがまわらず単純な言葉が出てこない。

でも行かなくちゃ。祖父のところへ行かなくちゃ。

 

頭の中で同じ曲のサビぐるぐるまわっている。

映画「エリン・ブロコビッチ」の曲だと気付いたら、急に泣けてきた。

立ち向かうばかりが能じゃないと思ったのだった。

 

実家に行ってきた。明るい笑顔で親切に快活にきびきびしてきた。

夫はいつも通り八方に笑顔をふりまき、こまごまと便宜を図っていた。

ベンチでの作戦をおくびにも見せなかった。

祖父の回復はめざましく、実家の態度には大きな変化があった。

 

絶望すると討つか自害しかないと思ってしまう。

でもわたしは全知全能じゃないんだから、抜け道があることもあるんだ。

頭がまわらない。いろいろ限界だ。事故を起こさずよく帰ってきた。

 

EVERYDAY IS A WINDING ROAD

EVERYDAY IS A WINDING ROAD

EVERYDAY IS A WINDING ROAD