祖父の入院

祖父が入院した。

 

実家の父一家は突然海外旅行に行きたくなったそうで

これまでそういうときはわたしが泊まり込んで祖父の身の回りを手伝っていた。

それで十分だった。祖父は頭ははっきりしているし好き嫌いもない。

自分のことは自分で出来るし、愚痴も自慢もこぼさない。

ただ火を使って料理が作れないだけだ。

だらしないとろがまったくなく、誰からも尊敬される人だ。

わたしは祖父といられることはありがたいと思っている。

仕事が数週間中断されてもそれでよかった。夫も協力してくれる。

そもそもそのために故郷に戻ってきたのだ。

でも、父一家はそれをどこか後ろめたく感じているようだった。

 

今回わたしが仕事続きの間に、彼らは突然海外旅行を計画した。

そして祖父を旅行に備えてお試しショートステイに預けたのだった。

それはわたしが前からずっと反対し続け、懇願しつづけていたことだった。

祖父は枕が変わるとものすごくストレスで混乱する。

祖父はそれをどうしても嫌だと言っていた。本当に祖父にはつらいことなのだ。

でも祖父は、徹底抗戦はしない。苦労を粛々と忍ぶ人だ。

そして恐れていたことが起きてしまった。

祖父は動機や息切れ、眩暈を感じ、精神的にも混乱して帰ってきたのだった。

わたしはそれを今朝「おじいちゃん昨日から入院したよ」というメールで知った。

旅行に先駆けて祖父をショートステイさせていたことは伏せていた。

わたしは偶然、実妹からそれを知ったのだった。

 

彼らの海外旅行計画にはわたしも含まれていた。

彼らはわたしが働く夫とひとりぼっちの祖父を置いていくだろうと思い

一緒に食事が美味しいと有名な国で美食と買い物を楽しむ気でいた。

わたしは祖父に近づくためには彼らの好意を得る必要があると思っていた。

それで本当にせっせと、それはせっせとごまをすり続けた。

それが仇になった。祖父をよそに泊まらせて海外なんか行かない。

そんなことをするために何十年ぶりに故郷に戻ってきたのではない。

その返事をする前に、祖父が入院した。

 

平時、わたしは父一家に好意を持っている。

少なくとも実母に対する以上に好意を持っている。

でもこういうとき、彼らが自分の贔屓ではない人間に何をするかを思い知るとき

筆舌に尽くしがたい怒りを覚える。

 

明後日、何か月も前から楽しみにしていた仕事がある。

でもさっき代わりの人を探して連絡をつけた。

すごく残念だ。こっちの件でも泣きたい気持ちだ。

だけど明後日は敬老の日だし、後悔しないようにしたい。

 

一昨日休みだった日に、祖父に会いに行っていればこんなことにはならなかった。

彼らはその日に祖父をショートステイに送り込んだのだった。

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