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男女同権なら、童貞でだいじょうぶ 其の四

エッセイ的なもの

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妻は夫を支えるものなら、妻が結婚前に子づくりのいろはを学んでおいてもいいんじゃない? と科学の時代に生まれた現代っ子は思うかもしれませんが、日本が誇る世界のオカモトがコンドームを売り出したのは1934年2月のこと。それまで避妊といえば安全性も定かでない避妊具、医学的に根拠のない迷信以外にはセックスしないよりほかなかったのです。 
このことについて桑井いね著「続・おばあさんの知恵袋」にはこうあります。

中絶もままならぬ時代には、酸漿(ほおずき)の根とか、昆布の根を使って、素人がなんとか中絶の真似事をして、そのために命を落としたり、死にそうな目にあった人の話も聞きました。新聞に、「月やく不順のお方…」などの広告が出ましたが、それは通経剤の名をかりた中絶の薬ですとか、ひどいひどい下痢をおこしてそのために流産がおこるのを待つ薬と聞きました。
「婦徳ということ」より

ベネトンとコラボレーションした薄さ0.03mmのコンドームは電車の吊り広告にもなりましたが、コンドームが社会的地位を確率したのはほんの数十年前のことです。それまではセックスと妊娠はいま以上に切っても切れない中でした。男性は妊ませてもとぼける、ばっくれるなど逃げ道がありますが、女性は産むにしても堕胎するにしても命がけです。気質の世界で生きていくつもりの女性が、婚後の性生活を円滑にするためにセックスをするというのはリスクの大きすぎる話でした。

処女性が尊ばれましたのも、処女には変な病気の心配もなく、父無し子がどこからか現れる心配もないからでしょうか。
「婦徳ということ」より

処女の嫁がほしいという動機には、優越感を味わいたいとか性関係を経験した女性を見下すという感情的な理由意外にこのような合理的でもっともな理由がありました。また性病は今よりもずっと恐ろしいものでした。もちろん花柳界で性病をもらってくるのは男性です。

この事件を理解しますには、当時の性病の恐ろしさを知る必要がございます。性病は花柳界でうつされる病気というので花柳病といわれました。…淋病も梅毒も一度かかったら容易に治らない病気で、ことに梅毒は脳脊髄をおかされると廃人になってしまいますし、遺伝梅毒といって子孫にまで伝染してゆきますから、たいそう恐ろしいものでした。
「T事件」より

「この事件」では「今の世の中では性病の経験のない配偶者を求めるのは困難であるし、」という京都大学教授、T博士が性病歴を隠していたことにお怒りの長女S子さまに送られたコメントが登場します。身分の差によらず男性は結婚前にプロの方々に多大な犠牲を払わせていた、ということですね。アメリカの話ですが、不妊症の夫婦を診察したところ、妻は処女で、尿道が異常な大きさになっていたという恐ろしい話がありますが、花柳界に通っていた男性諸氏におかれましてはそのような間違いはけして犯さなかったことでしょう。道徳的な間違いはともかく。
 
このような時代背景を考えると「男性の童貞は不味いが、女性の処女は望ましいもの」という論にも合理的な一面があったのではないかとわたしは思いました。昔といってもお若い方にとっては曾祖父の時代ですが、ほんとについ最近まで、男性は何も知らない処女の新妻を手ほどきすることが望ましい具体的な理由があったのです。さて、では21世紀の日本においてはどうなでしょうか。