コックリさんのこと

子どものころ、学校から帰ったら母が台所のシンクで何か燃やしていた。紙だった。
余裕のないこわい顔をしている。
「それなあに」
「いいの」
教えてくれない。
 
夜になって、兄と母の話から何があったかわかった。
学校から帰った兄が、遊びに来た友だちと、学校で流行っているコックリさんをやろうとしたのだ。
母は面白がって後ろから見ていたが、ふと
「私は何歳まで生きますか」
と聞いてみた。
 
10円玉は「5」へ行って、「6」で止まった。
56歳だと母は思った。
 
その話を聞いてからずっと、母が56歳で死なないようにあれこれ画策した。
神さまにお祈りして、鶴を折って、おまじないを試した。
母は56歳を過ぎてなお現役で外回りの仕事をしていた。ああ、怖かった。
 
私たちが住んでいたこの家には、後に叔母一家が住んだ。
叔母は二度の結婚と離婚の後、大学に入りなおし、科学者になり、大学講師になり、世界特許をとって新聞に出た。息子ふたりを女手ひとつで育てる、豪快な女海賊みたいな人だった。
末っ子だった叔母は、息子を残して、兄より、両親より早く亡くなった。
 
56歳だった。
その家は数年前に取り壊されて、今はお寺の駐車場になっている。
 
 
コックリさんについてしらべてみた。その1 たまごまごごはん

広告を非表示にする