SFで考える「ポルノで強姦を楽しむ」ということ

「結局被害者はいるのか、いないのか、ハッキリしろ。シュレーディンガーの猫かよ!」と混乱してきたみなさん、こんにちは。小娘からババアへ、大人の階段を登るシンデレラはてこです。少女だったといつの日か、思うときがくるのさ。
今日はみなさんの優れた解答力ではてこにタイトルを教えてほしいSF小説がありますので、どうぞよろしくお願いします。
 
物語は近未来。核戦争だか環境破壊だかで人間は地上に住めなくなり、長い間地下生活を送っています。食べ物や飲み物はなんとアンドロイドの排泄物。地上に住む人間そっくりの有機アンドロイドたちが人間用に食べ物を消化し、それに特殊な光線を当てるとあら不思議。光線は人の視覚嗅覚に錯覚を起こさせ、アンドロイドのゲロは牛乳に見えたり、アンドロイドの下から出たカレーがインドカレーに見えたりする仕組みです。
 
このライトは万能で、服に当てれば服のデザインも手触りもすっかり変わります。お金持ちはこのライトのチャンネルを豊富に持っているので、数分の間にめまぐるしくファッションショーをすることも可能。子どもたちの授業を受け持つ教師はこのライトで厳格な顔を保っています。
 
人間とアンドロイドたちの間に一つの神話があります。空から船が降りてくる。そして地上は一変する。人間の間には幻視によって記憶にない銃の作り方を解き明かしてしまう中年男や、夢で未来を見る少年が現れます。彼らが見る過去と未来の正体は何なのか。そしてアンドロイドと人は地球でいかにして共存するのか。作者はたしか神林長平です。
 
さて、今日のお話はここから。
アンドロイドたちは特に差別している自覚はないのですが、ごくふつうに地下で暮らす人間を見下しています。だってあの人たち、地上に出てこられないんでしょ? あたしたちの排泄物で暮らしているのよね、やだーキモーイという感じ。
  
そんなアンドロイドに超ムカつく人間の若者たちは、ちょいちょい地上に出かけて、平和に暮らすアンドロイドを拉致ってレイプして壊しています。つまり殺しているわけですね。
 
ところが相手はアンドロイド、そして話はサイエンス・フィクション。この拉致ってレイプのやり方も手が込んでいます。
まず疑うことを知らないいたいけなアンドロイドの少女を口車にのせて拉致る。そして少女の意識を、シャッターだかなんだかいう名前の特殊な機械で乗っとる。乗っとる側の人間は少女に意識を飛ばしている間、放心状態になります。
 
少女の意識は人間と入れ替わり、乗り移った人間は思うさま少女の体でレイプされることを味わいます。どんなに傷つけられても自分の体は無傷ですから、文字通り死ぬまでマゾヒズムを味わい、同時にサディズムも満たすことが出来ると言う一石二鳥。加えて放心状態になっている人間の体を使って、手があいている仲間は人形相手にするようにセックスすることも出来るので一石三鳥。たいへんお得な仕様です。
 
強姦し、切り刻み、再起不能になったら意識を元に戻します。少女の意識は二度と戻りません。思うさまレイプと殺人を楽しんだ人間と、好きなだけレイプされた人間は、次の獲物を探します。アンドロイドを殺すのはもちろん違法。しかし若者たちは「アンドロイドは人間ではない。殺人ではないので問題ない」と考えています。ムカつくアンドロイドめ、ざまあみろ。ああ、すてきなレイプだった。思い出すだけで、あたしグッときちゃう。
 
この場合、被害者は存在するでしょうか? だとすれば誰が被害者だと思いますか?
このレイピストたちを人間に対する暴力の罪で裁くことはできません。しかし、このアンドロイドの少女は、間違いなく被害者です。少女を乗っとった女は被害者ではなく、少女を犯した男たちと違う立場でレイプに加担しています。
 
少女を襲った人間たちは物を壊したかったのではありません。自分たちを見下す階級に復讐するため、人間そっくりの生身の体をもつ少女を、人間にとって恐ろしくて屈辱的な方法で残忍に苦しめることを楽しんだのです。まるでポルノというフィクションを通して人を強姦し、暴力を振るうことを楽しむように。 
少女の体を乗っとった女は、少女にとっての悲劇を、個人的な“レイプ体験”という悦楽として楽しんでいます。現実の犯罪を反映したポルノを通して、強姦を楽しむように。
  
現実の犯罪を反映したポルノの背後には、現実の被害者が存在しています。
彼らは犯された日の悪夢を抱えながら、あなたと同じように書店やビデオショップへ行き、インターネットを使い、あなたと同じように「レイプを楽しむ」という言葉を、どこかで目にしているのです。
 
だからね。
「妄想は頭の中で」「トイレのドアは閉めて」って、はてちゃんは思うんだよ。
 
ええっと、次は「肩車と愛の営みの話」をするつもり。
 
ググる  真鍮の鳥籠