アイドル声優とホストの安全な恋の歌

この間ほったんこと堀江由衣の歌を30分くらい聴いて思ったのですが、ホストとアイドル声優はよく似ています。
LOVEどっきゅんの歌詞とアイドル声優の歌詞のスタンスは同じです。
だからホストの歌はニッチな需要で伸びていくんじゃないかと思います。
 
アイドル声優の歌は基本的に男女問わず普遍的な気持ちを代弁した歌ではなく、女の子が意中の男性に寄せる想いを歌ったもので、歌詞には女の子特有のキーワードがあふれています。
天使こと堀江由衣さんの歌も、世界一かわいいと評判の田村ゆかりさんの歌もそうです。そして彼女たちの歌を聴いているのはおそらく9割以上男性ファンです。彼らは
「ピンクのキャミソールを着て 今夜 ねえ 遊びに行くわ」
と聴いて、よっし俺これからピンクのキャミソール着てゆかりんち行くわ、とは思わないはず。
「素直になれない 天邪鬼」
とほったんが歌うのを聴いても、俺もっと素直になりたいんだ、とは思わないことでしょう。
 
彼らはaikoの歌を聴く女子のように感情移入して歌を聴くのではなく、あたかもほったんやゆかりんからのメッセージであるかのように歌を聴きます。アイドルの歌はファンへのメッセージ。かつて松浦亜弥もコンサートをファンとのデートだと言いました。だからこそゆかりんのファンは世界一可愛いって今日も言ってね、と歌うゆかりんに世界一かわいいよと絶叫するのでしょう。だからここでほったんとイチャイチャしているのもとうぜん自分です。なので男優の顔ははっきり映りません。初期のときメモみたいですね。
 
さて、ラブどっきゅんはホストから客である“りさ”へあてたラブソングです。これも聴く人にホストに感情移入を起こさせる歌ではありません。りさの立場にある人たちを酔わせるための歌なのです。「オマエのこと好きだけど… 俺… ホストだから」。
本当はホストだから付き合えないということはないはずですが、この歌は付き合えない理由をうまく説明してくれます。
 
彼には大きな、恐らく多額の資金を要する夢があります。その夢を叶える手段としてホストとして働いている。ホストである以上特定の客と深い仲になるわけにいかない。マクラで客を取るようなヤツと違って馬鹿で不器用で真面目な彼は、りさへの熱い思いを身悶えしながら歌い上げます。
 
アイドル声優の歌にもアナタと今のところ付き合えない理由がよく出てきます。
それはわたしが素直になれないからだったり、勇気がないからだったり、内気だからだったりするからで、とにかくけしてアナタが嫌いだからではないのです。
もしかしたらアイドル声優は大きな夢であるお仕事があるから付き合えないのかもしれません。
  
ところでホストクラブ通いをするりさは恐らくかたぎの若い娘ではないでしょう。
ふつう若くして表の稼業で成功した女性にホスト通いをする時間はないからです。りさは若くない有閑婦人か、若くない実業家の女性か、若い水商売、風俗嬢、あるいはシャッキングガールである可能性が高い。
そんなニッチな需要に当てて作った歌が果たしてヒットするのか。 
 
久保田利伸の"ミッシング"という歌をご存知でしょうか。
横恋慕した女性と密かに両思いになってしまったという切ない歌です。歌詞はこちらこの歌はたいへん売れました。私もとても好きでした。そんな話とは縁のない子どもの頃から結ばれない二人的な歌が好きだったのですが、そういう歌が好きだった理由のひとつはいま思うと自分が臆病だったせいではないかと思います。
 
これさえなければ告白できる、という状況は言い換えればそれがある間は告白しなくていいということです。
恋を打ち明けるのは大勝負です。告白するのに何の妨げもないとしても、相手が自分の気持ちをどう思うかなんてわかりません。保険をかけることなんて出来ません。
また目出度く両思いになれたらそれでいいかというと、恋人になっちゃえばあとはうまくいくなら離婚訴訟なんて起きないのです。
 
あなたが好き。きみが好き。もしも付き合えたら世界一すてきな恋人になれる。
だけど二人にはどうすることもできない障害があるから一緒にはいられない。
こんな安全な状態があるでしょうか。
恋人同士になれたらあんなことやこんなこと、楽しいことがいっぱいあるだろうなと空想しているだけなら、実行して失望することだってありません。
外的な障害のせいにしている間は相手を責めたり相手に責められたりすることもありません。
 
こういう外的な障害に守られながら思う存分想いを寄せるのは、株を買わずに値動きを見たり、馬券を買わずに競馬を見るとの似たような切なさと楽しさがあり、他所の家の犬猫を可愛がる気楽さと甘さがあります。
勇気がないんじゃないんです。誰よりも深く愛してるこの気持は本物なんです。出会いがもっと早ければ。みんな世間と運命が悪いんです。
 
最近ではたとえ一方が未成年でも入籍している身であっても自分の恋愛感情は肉体的に全うするのが立派なことと思う人も増えています。横恋慕くらいでは外的な障害として不十分なのかもしれません。
でも大きな夢のために働くホストなら、両思いでも付き合えないのは仕方がない。
世界一純粋な乙女がその他大勢のファンの気持ちを考えると自分から告白できないのもやはり仕方がない。
二次元と三次元の恋愛も叶わないことにかけてはロミオとジュリエットをしのぐ勢いです。
 
こんな風にアイドルサイドから熱烈に愛を捧げられちゃう歌は、これからもっと伸びていくんじゃないでしょうか。
問題はCLUB PRINCEくらいなりふり構わず捨て身で女性を崇拝して見せられる男性がどれほどいるかということだと思います。
俺についてこい、ではダメなのです。俺のダンディズムなんて胸板とともに捨ててしまっていいのです。求められているのは仕事と割りきって身を投げ出して女性を夢中で口説ける男性です。
汚くなんてありません。女性アイドルはずっとそうしてきたんですもの。

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