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叶恭子の知のジュエリー12ヶ月

はてなで知った「叶恭子の知のジュエリー12ヶ月」を図書館で借りた。
書店とブコフで探したけれど、見つからなかった。図書館ならやってくれると思った。
セクシータレント叶恭子本でありながら真面目な児童向け人生訓の書だから、書店もどこに置いたものか悩んでしまうのかもしれない。
 
ところでこの「…教えて、恭子おねえさま。」という帯がまた誤解のもとなんじゃないのか。
どんな刺激的なめくるめく世界を教えてくれる本かと思う人続出だろう。
恭子お姉さまが教えてくれる「純度の高い、知性のテクニーク」とは、いたって地味で堅実な人生訓。誰しも避けることのできない人生のさまざまな問題にいかに力強く立ち向かうか。戦後少女雑誌の道徳欄のようなお話。
 
装丁は日めくりカレンダーに箴言がついてるスタイルで、二三日置きに恭子お姉さまのお言葉がある。
また月と月との間には十代の読者からのお悩み相談があり、恭子お姉さまが丁寧に答えている。
 
恭子お姉さまの格言には月ごとにテーマがある。
1月 「知性」について
2月 「ブス」について
3月 「発見」について
4月 「恋愛」について
5月 「関係」について
6月 「友だち」について
7月 「思いやり」について
8月 「欲望」について
9月 「お金」について
10月 「失敗」について
11月 「肉親」について
12月 「孤独」について
 
恭子お姉さま、興味深い人だ。美香さんがあれだけ尽くすのもわかる気がする。
浮世離れしているように見えるけれど、お金のことも人間関係も地に足の着いた話ばかりだった。
逆にああいう生活をするにはこれくらいの信念がないと難しいのかも。
 
印象に残ったところをいくつか写しておく。
整形を親に反対されている、という相談への回答から。

「化粧」と「整形」は歴然とちがうものです。(中略)お化粧は顔を洗えば落ちますが、整形は「もとの自分に戻らない」ことが前提です。

もとの自分に戻らない。深い。
整形のリスクとして「整形後周囲の人たちが自分や家族にどう接してくるか」も考えるように、という一文も。
「なぜ友だち同士群れる必要があるのかまったくわからない」
「人目を気にすることはありません」
と再三書いている恭子お姉さまが整形のリスクとして周囲の反応をあげているのが興味深かった。
そうなっても後悔しないくらい大切なことなのかどうか、ということだと思う。
 
さて、実は投資に明るく、投資で暮らしているという噂もある恭子お姉さま。
9月の「お金」について、より、「冷静な消費者」。

冷静な消費者
しかし、それ以前に、当然のことながら、
わたくしは「冷静な消費者」であるのです。
「もの」の性質とそのクオリティ、
示されている値段のバランスはどうか。
かつてわたくしはそのことを考え、
バナナをとても研究したことがあります。
 P178

バナナを研究。恭子お姉さまは研究好きで、図鑑などがお好き。
妖怪が大好きで書店で長いこと妖怪図鑑を読みふけって美香さんを困らせる恭子お姉さま。
それでどのバナナがバランスよかったんだろう。
 
次は美香さんとの二人暮らしが長い恭子お姉さまの語る親子関係。
金を無心に来た父親から傘で殴られたことで有名な恭子お姉さまが語る親子関係は綺麗事ではない。

助けを求める
「家庭」とは、本来子どもにとって
安心できる場所であるはずですが、
子どもの成長を親がおびやかしている場合、
その「家庭」は、できるだけ迅速に
逃げ出さなければならない場所となります。
また、逃げるためには、ときには第三者の力を借りることも
辞してはならない場合があるのです。
 P225

そして逃げたあとのこと。

不幸の選択
「自分の話をよく聞いてくれなかった」と
親への恨みをつのらせるあまり、あてつけに
わざわざ不幸になることばかり選択して、
自分の人生をこじらせてしまう人がいますが、
親が話を聞いてくれなければ、自分で自分の声に耳を傾けて、
後悔しない選択をしていくしかないのです。
「自分の不幸は親のせい」と考えることからは
できるだけ自由になることが、幸せへの近道です。
 P222

親との関係で人生をこじらせる。あるある。いるいる。結論。

あなたの人生
家族との関係があまりにも辛く、
「いま」が苦痛そのものであったとしても、
将来にわたる時間まで、苦痛一色であると
あきらめた想像をするのはやめましょう。
あなたの人生はあなたのものであり、それは本来
誰からもスポイルされてはならないものなのです。
 P227

逃げた人も逃げないことを選んだ人も希望を捨てちゃいけませんよ。
 
さらに恭子お姉さまは上品に率直に性と肉体関係についても語る。
奔放な性を謳歌しているかに見える恭子お姉さまの回答は驚くほど真面目。
どうやら体目当てだった男性と「どうしたら、また会えるようになりますか」という相談への回答より。

ライオンの場合、狩りをするのはオスではなくメスですが、その光景は、欲求を満たすためには手軽な対象にまず目をつけるという意味で、性的な興味のみで行動してしまう男女の比喩ととらえることもできなくはないでしょう。「わたしって困るくらいモテるな」と勘違いしている女の子は、水辺で一匹だけで無防備にたたずむ弱い個体、たとえて言えば水牛の子どものようなもの。

あたしって小悪魔子猫ちゃんだと思っていたら水辺の仔牛だったでござるの巻。
そして言うまでもないことをあえて言ってくださる恭子お姉さま。
言うまでもないから言わないんだけど、いつのまにか忘れられている事実。

当然の事実
当然のことながら、
避妊をしないでセックスすれば妊娠します。
幼い子どもだけでなく、
世の中には信じられないことに、
大人でもこの当然の事実をわかっていない人がたくさんいます。
P157

「童貞捨てたい」「やりたい」とかいう人たち、こういうことわかって言ってるのか。大丈夫なの、やって?
コンドームは性病を防ぐもので、ピルを飲んでいない限り妊娠の可能性はあるということがわかっていない人もいる。
つけ方が悪かったりするとけっこう破れるらしいね。
 
次は年上に囲まれていた十代の自分の手から谷川俊太郎の"愛について"を取り上げて、この本を読ませたいと思った一文。

犯罪であるもの
彼氏にするなら同級生よりも年上、と背伸びしたい女の子へ。
あなたの気持ちに水をさすようですが、
二十歳以上の成人が、未成年を相手にした場合、
合意があろうとなかろうとそのセックスは、
この社会では多くの場合、
犯罪行為となる「淫行」と呼ばれることは、
目をそらさずに知っておきましょう。
 P158

これと、その翌日のAUG21・22のコメント。

狩りをするライオンは子どもからねらう
自分と同じ歳の男の子の
未熟な身勝手さよりも、あなたが
まだ未成年であることに目をつぶる、
大人の男性の狡猾さには、
くれぐれもだまされないように。
P159

全国の中学高校の司書さんと図書委員は、この本を学校の書架に数冊置くといいと思う。
年若いお嬢さまや姪御さんをお持ちのみなさんにもおすすめしたい。今からでも遅くない。
ご子息、甥御さんに進呈するときは大胆に胸元を開けた恭子お姉さまを写した帯をとってからにすることをおすすめする。
 
最後に4月の「恋愛」について、より。

焦りは不要
何かに夢中になっている最中にふと、
「そういえばわたし、最近恋愛してないわ」などと
我に返ることがあったとしても、
焦る必要はまったくありません。
いま夢中になっていることを、
心から楽しんですごせばよいのです。

叶恭子『知のジュエリー12ヶ月』、純度の高いテクニーク こどものもうそうblog
『知のジュエリー 12ヶ月』叶恭子 雨宮まみの「弟よ!」 …「泣きながら読んだ」とのこと。