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世界でいちばんクイーンメリーを贈りたい女優、姫川亜弓

タイプ2の解説で「亜弓さんが自分と無関係な乙部のりえの不正を許さなかった」と書きましたが、亜弓さんにとってマヤは特別でしょ!と思われた方へ。
 
こちらのエントリーのブックマークコメントを拝読していたら、思いがけずガラスの仮面についてのご意見がありました。
ブックマークのリンクが出ない方はこちら
みなさん、大きな紙面にザラ紙の、あの素敵なデラックス版はお読みになっていらっしゃいますか?
 
追記として書いてみたら長くなったので改めて書くことにしました。
 
確かに亜弓さんにとってマヤはただ一人の友だちであり、命を懸けて戦うライバルです。
しかし客観的に見るとマヤと亜弓さんの関係は顔見知りの同業者です。
あのころはまだゆっくり話をしたことさえなく、お互い遠くから仕事ぶりを見て目を白黒させていたという仲でした。
 
そんなマヤを卑劣な手段で貶めた乙部のりえですが、あゆみさんは正々堂々忠告するでも、マスコミに対してマヤのスキャンダルの誤解を解くでもなく、“女優の喧嘩は舞台の上で”というまったくの個人的な哲学から主義をまげてまで父親のコネを使い、練習用、本番用二通りのカーミラをひそかに完成させ、本番当日乙部を叩きのめすという壮大な計画を齢十七にしてたったひとりで成し遂げました。やはり屈折していると言わざるをえません。
 
これはいうなればオフで何度か会ったことのある密かにライバルブロガーとして認める誰かが売られた喧嘩に、横から黙って参戦して自分のコネと才能と時間をフルに出し切り、ライバルブロガーに喧嘩を売った縁もゆかりもない人のブログを全力で封鎖に追い込む勢いです。
尋常なことではありません。
 
でも、傍から見れば赤の他人である人にわが身以上に入れあげる、それでこそタイプ2、それでこそ亜弓さんだと私は思います。
こういう方々は日頃はけしておせっかい焼きではなく、自分がかまわれるのも人にかまうのも嫌いなのではないかと思います。
基本的に自分がされて嫌なことは極力人にもしない。
 
しかし自分の正しさの基準を侵害するような問題になると話は違います。
不正に遭っているとみなした人を擁護することで自分に得があろうがなかろうが肉親以上に味方する。
その擁護の仕方が自分の属する社会で異端とされることであったとしても、信じた道を突き進む。
それがこのタイプの方々らしい仁義の切り方だとはてこは思います。
 
亜弓さんは愛犬家でありながら、役作りのためには無邪気に足元に寄ってきた仔犬も情け容赦なく蹴っ飛ばします。
亜弓さんは外の雑種なんか蹴り上げるぐらいがお似合いよ、と思っていたわけではなく、周囲に自分の生存価値を認めさせるため命がけで女優業に励んでいるので、あの場合生き抜くためにはやむをえなかったのだと思います。
たぶん実家の犬やばあやであっても、場合によってはやる。
 
亜弓さんが役作りの妨げになるものを認めることがあるならば、その何かは亜弓さんが命以上に大切だと認める人か、命そのものである哲学に係わる問題なのでしょう。
 
つり橋でマヤを助けたのはマヤちゃんが落ちたらたいへん!というまっとうな倫理観によるものだったのか、そんな卑劣な真似をしたら一生自分が許せないととっさに悟ったのか、微妙なところだと思います。
 
なんだかんだで彼氏も作り、人並みの高校生活も送り、いつも仲間に囲まれながら人間らしさと女優生活を両立させているマヤと比べて、亜弓さんの青春は明日のジョーばりに戦い一色。
マヤが青春スターと仕事ほっぽらかしてデートしていた間、亜弓さんは役作りとしておじさまとの擬似恋愛に励んでいたなんて悲惨すぎる。
あれだけの資格をとって維持するには毎日舞妓さんもびっくりなお稽古のメニューが組まれているに違いありません。
 
そんな亜弓さんが人並みの青春と引き換えに手に入れた演技力はまさに血と汗と涙の賜物。
「わーすごーい」とのん気に一喜一憂しているマヤは、「あたしってやっぱり生まれ付いてダメな子なんだ」と亜弓さんの努力を巧みに遺伝的特質に摩り替えてしまいます。
これは裏を返せば「生まれつきだから出来て当たり前だよね! あたしが出来ないのも生まれつきだもん!」ということですね。
 
「天才には、叶わない…! こいつがいる限り…! あたしの女優人生は、無駄…!」
と、一度はマヤが命を落とすのを見過ごそうとまで思いつめた亜弓さんとはなんと対照的なのでしょう。
もしかするとマヤに流れる天才女優の血が、無駄に消耗する自責の念を抱くことを自然に阻止しているのかもしれません。
 
というわけで、私が念頭に置くタイプ2にぴったりな条件の権化のような亜弓さん。
それにしても娼婦役なんかがまわってこなくて本当によかったです。どんな危険な役作りを始めるかわかったものではない。
たけくらべ”の結末があの辺で助かりました。
 

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ガラスの仮面