日本の母と息子、姑と旦那のすてきな夢

親と同居している家事の出来ない男性を見て
「家を出たことがないから」
と思うことはありませんか?
 
一方で家事の出来ない女性に
「親に教わってないんだな」
という人もいますね。
親元にいることは家事を覚える上で有利でしょうか、不利でしょうか。
 
アラフォー同居の知人がいるのですが、彼女の家では基本的にお母さまが台所を仕切っています。
いちどお母さまが入院されたことがあったのですが、お母さまが退院されたとき彼女がくれたメールには
「これで明日からまともなご飯が食べられる」
と書いてありました。ちなみにお母さまは胃潰瘍で入院されたので、退院後しばらくはおかゆを召し上がるとのことでした。
 
彼女は料理がほとんどできないので、このままでは先々困るのではないかと思いますが、やなんだそうです。料理は嫌いなんだそうです。
彼女は週に何度か自宅で昼食を取りますが、彼女が料理をするのはそのときだけです。
お母さまが週中のお昼に料理をなさらないのは、彼女のお兄さまがその時間に家にいることが滅多にないからで、お母さまは息子に残り物や出来合いのものを食べさせるなんてとんでもない、と常々仰っているそうです。
 
お母さまは娘に家事を教える気がないようですが、嫁いない歴=年齢のお兄さまにはむしろさせない決意でいる様子。
お兄さまは気が向いたとき、気が向いた程度に家事を手伝いますが、お母さまはそれをあまり快く思ってはいません。
 
お母さまが仕事を持っていたころは、彼女も夕飯の支度を任されることが週に何度かありました。
そのころはお父さまもご存命だったので、彼女が週中家ですごす日には彼女が四人分の食事を用意しました。
お兄さまがこのような食事当番を頼まれることは一度もありませんでした。
 
お母さまが入院中いちばん心配したのは「息子が身の回り世話をちゃんとしてもらえているか」ということでした。
お兄さまは五体満足、大学を出た後就職し、何度か転職をされましたが常に仕事を持っており、社会的な援助が必要なわけではありません。
「おかあさんは兄ちゃんをえこひいきして、あたしを差別してる」
と彼女は私に会う度ぶつぶつこぼしていました。
 
アラフォーになっておかあさんが兄ちゃんをもないだろう、と私は思いましたが、先日こちらのエントリーを読んで、思ったことがあります。
日本男児の考察
彼女のお母さまは息子を小さなお殿様にしたいのではないか、ということです。
 
殿に家事など瑣末なことで手を焼かせるのはおかしなことです。
腰元がいないのでお母さまが身の回りの世話をし、出来ないときは娘に託します。
いずれ城を治める主に仕えるのは、少なくとも一族の一員である間は当然です。
 
殿が家事に手出しをするのはよくありません。
殿の仕事は国を治めることなのです。
そのためには努めて勉学に励んでいただきたい。大学へだってやります。
 
殿には世に出て名を上げ、嫁を娶り、一日もはやく一国一城の主となっていただきたい。
嫁にはさっさと跡取りを産んでもらって、殿を育てたように幼い世継ぎを育てるよう見届けるのが母の役目。
 
これがお母さまが漠然と思い描いている夢なのではないでしょうか。
だとすると、城をもつ予定がなくいずれ国を出るであろう娘と扱いが違うのも納得できます。
娘はどこか、殿の勢力にとって脅威にならない国へ嫁いでくれさえすれば、家事もできなくて結構です。
 
これはこれでいい夢なんじゃないかと私は思います。
立派な息子、自慢の嫁、有望な孫、それを養い育てる母になる、という夢。
なんだか日本昔話みたいな平和な光景が目に浮かんできます。
 
お母さまの夢がいまのところどの程度叶っているかは微妙な線ですが、とにかく殿がご健在であらせられれば望みはあります。
そう思いながら息子の世話を焼き続け、年金もぜんぶ息子につぎ込んでいるのがアラカンニートのお母さま方ではないでしょうか。
 
以前書いたアラカンニートの叔父をもつ知人の家庭が、なんとなくそんな感じ。
彼女にとって祖母に当たる亡くなった母親は仕事をしない息子に困ってはいましたが、やはりどこか甘いところがあったようです。
 
そういう甘さってどこからくるんだろう?
“異性の子どもは小さな恋人”みたいな感覚なのかなと思ってたのですが、“息子は小さなお殿様”の方が近い気がしてきました。
 
これをお読みになりながら
「うちは違うな、うちの母親は俺にずいぶんがみがみ言うから」
と、お考えになった男性のみなさん。殿にがみがみ言うのは御つきのものの役目なのをお忘れなく。
 
いずれにしても殿として育てられた男性が家庭を持った後、殿っぽく振舞うのは自然なことです。
また殿として育てたお母さまが殿らしく振舞う息子の肩をもつのも当然です。
しかし大半の女性はまさか自分がそんな高貴な方とご縁をもったとは夢にも思っていないことでしょう。
 
さて、先ほど書きましたが私はこの夢をそんなに悪くないと思っています。
少なくとも息子や娘を恋人のように思うよりずっとずっとましだと思います。
私がこの夢を追いかけるお母さま方と、殿として育てられた息子のみなさんに僭越ながらお願い申し上げたいことは二つです。
 
まず、殿が政を正しく行うためには下々の教育が必要です。
下々を教えるためには下々の暮らしを親しく知る必要があります。
ぜひそのために御自らお出ましになり、社会勉強として下々のやり方を学んでください。
 
年貢が無駄に使われていないかをお調べになるように、御自ら家計簿をお改めください。
下々が家計簿の付け方も分からないようであれば、一年二年御自らご記帳になり、童に教えるようにやさしく手取り足取り辛抱強くお教えくだされば、国はずっとよくなることでしょう。
農具の使い方を知らない農民に教えるように、御自らフードプロセッサーの活用方法をご高察され、お手並みをご披露ください。
 
殿をお育てになるご母堂さまにおかれましては、殿がけして世間知らずなどと後ろ指をさされることがないよう、女子どもに教える以上に下々の暮らしぶりとそのやり方をご指導くださいませ。
 
また、どうかどうか下々に慕われるよい殿様になってください。
下々は敬うべきと言って聞かせてもなかなかそれを飲み込むことができないものです。
ですから繰り返し繰り返し、目に見えるよう形になるよう殿のご配慮をお示しください。
 
「殿は我々のことをいつもいちばんに思って下さる、ありがたいことだ」
と思えば下々は喜んで殿を支え、国をよくして行こうと思うものなのです。

他国の殿方から学び、家臣が明るい国は手本とし、悪政に苦しめむ者がいれば他山の石として厳しくご自分を戒めてください。
どうぞ机上でこしらえた文言で下々を困惑させることなく、東奔西走し、国の状態に常に敏感であってください。
それはたいへん貴重で価値のあるお仕事、殿以外どなたさまもお出来にならないお仕事なのでございます。
 
ご母堂さまにおかれましては、立派にご成長あそばした殿を重々尊重され、よもや若とお呼びできたころのようにあれこれ指図するなど、出過ぎた真似をして殿の顔に泥を塗るようなことはくれぐれもなさらないでくださいませ。
  
これが男の生きる道 ? - 上野千鶴子vs澁谷知美、‥‥‥そして橋本治

広告を非表示にする