男は強姦されないと思ってる人がわからない

「おまえら全員掘られろまで読んだ」というブコメに吹いて、軽率にスターをつけてしまって反省中のはてこです、こんにちは。また長文です。
  
性犯罪、性的虐待、性暴力関係の話題になると男は〜だから、女は〜なので、というコメントをよく見るんだけど、男はレイプされず、女は加害者になりえないと思ってる人って意外に多いんですね。
映画や本の中でも男性への性的虐待、性暴力は女性を対象としたものに負けず劣らずさんざん出てくるのになぜなんだ。

 ※北野武の映画“座頭市
  S・キング原作の映画“ショーシャンクの空に
  ダニエル・キイスのノンフィクション小説“24人のビリー・ミリガン”
  アニメ化された“ブラックラグーン”のヘンゼルとグレーテルなどなど。
 
男を襲うとか腐女子とゲイの妄想お伽噺だと思ってるのかな。
  
私はこれまで友だち二人、知人の彼一人の計三人から性的な搾取対象にされた話を聞いたことがある。
彼らはみんな性的にストレートで、特殊な環境にいた人たちじゃなかった。そしてそんなことを話してくれる人は多くない。
だから水面下はかくや、と思う。
 
何より驚いたのは男性が性暴力を受けた場合は強姦罪が成立しないということ。えーなんで? ぜんぜんわからない。
口だろうが肛門だろうが合意なしに性器をねじ込んだり性器を濫用したりするのは強姦だよね。百歩譲って強姦じゃないとしても性犯罪以外の何ものでもない。
 
へんなところでこれだけ崇め奉られているちんこの基本的性権が蹂躙されているという不思議。
ちんこの基本的性権は守られなくてはならない。ちんこには合意なしに活躍の場を求めない義務があり、合意なしに利用されない権利がある。
それを侵害するのは強姦である。
 

バイト仲間が聞かせてくれた話。
被害者は高校生で、加害者は気の弱そうなサラリーマン、場所は電車だった。彼はけっこう男に狙われるタイプだそうで、このときは次の電車で引き摺り下ろして駅員に突き出した。
私は笑った。彼も笑った。バカなサラリーマンだと思った。
 ※まさにそんな話が。そういや昔、満員電車でオッサンがいきなりチンコ掴んできてさ、
 
でもさ、たぶん触られるまま何もできない男の子もいる。
そして、そういう男の子にとってだいじな場所を、不気味なサラリーマンに逃げ場のないところで弄ばれるっていうのはものすごくショックなことだ。
そこはいつか彼にとってだいじなひとがかわいがる場所であって、それまで触っていいのは彼と泌尿器科の医者だけのはずなんだ。
 
それはぜんぜん笑い事じゃない。
私が乳首に触れることが耐えられないように、彼が性器に触られることにショックを覚えても不思議はない。ぜんぜん笑えない。
そして同意なしに人のちんちんに触りたがる人間はけして少なくない。
 
男性は性犯罪被害者にならないという幻想は「性犯罪といえば夜道で見知らぬ変態に襲われるもの」という例の限定されたシチュエーションの影響なんじゃないかと思う。
夜道で屈強な男性を単身丸腰で襲うやつはチャレンジャーだと誰もが思う。
だから性犯罪被害といえば丸腰の男に単身で襲われても勝算の低い女性だと思ってしまうんじゃないかな。
  
でもさ。
仮にも計画犯罪に手を染めようという人間が、そんな成功率が低くて捕まったときリスクが高い、ハイリスク・ローリターン株狙いみたいなことするバカばっかりだと思ってるなんて敵を侮りすぎ。
そういう危険な賭けをする想像力の乏しい連中だって「訴えなさそうな相手」を選んでるって言ってるんでしょ。
 
それに加えて「レイプは性欲をもてあまして判断力を失ったやつがするもの」という思い込み。
もてあますほどの性欲があるといえば屈強な男子、男盛りの中年。いやあ、元気だねえ、お盛んでうらやましい! という同性としてどこか誇らしげな感想もこういう犯人像から出ているのだと思う。
 
もしかしたらこういう思い込みの激しい人はうっふんな相手にしか勃起しないのかもしれない。襲う相手だって選びたい。
「露出の少ない地味な女じゃ萎えるよな。さぞぐっとくるスタイルで歩いてたんだろう」と思う。
そして、そりゃ女が悪い、目の毒だ。男をわかってないという結論が出たりする。
 
逆に言うと、こういう限定シチュエーションは「自分が誰かを襲うとしたら」というところから推論が始まるのではないかと思う。
ひとが誰かを襲うとしたら、それは爆発しそうな性欲で目がくらんでいるときだろう、女はそんなに性欲はないはずだ、犯罪を犯すなら人目を避けるだろう、襲う相手はセクシーアピール全開の無防備な女だろう。
まともな男だったら男と寝るなんて金もらっても勘弁だ。だから男を襲うやつはいないだろう。
 
こういうことを考えると、この限定シチュエーションは非常に有害だと言わざるを得ない。
このレイプ神話は被害者加害者を固定し、レイプが暴力であり、歪んだ自己愛と支配欲から起こるという認識を定着させないために一役買っている。
 
暴力的な気分に支配されている人はなるだけ手っ取り早く手近な相手に暴力をふるう。
自己愛と支配欲に振り回されている人は成功率の高そうな相手で自分の願望を叶えようとする。
だからわざわざ出かけて行って、勝算の低い相手をレイプしようとする人は少ないと思う。
おそらく身近な相手を狙った方が楽だし、成功率が高いと思うだろう。
 
ほかの人から聞いた話。加害者は叔母とその友人たちで、彼はまだやっと幼児から子どもになるくらいの年だった。
彼の保護者は親代わりに育ててくれたその叔母と友人たちだった。自分の経験から思うのだけれど、保護者から守ってくれる人を探すのはほんとうに難しい。
 
歪んだ自己愛と支配欲を性暴力で満たしたいと思っている人にとって、相手が男性だということはさして抑止力にならない。
どんなに屈強な男性も生まれたときは無力な赤ちゃんで、疑うことを知らない小さな男の子になって、騙されやすい十代を経て、隙だらけの二十代になる。
その間どこにいるか分からないレイピストの手に落ちないためには、周囲の結束と幸運に恵まれる必要がある。男には男特有の危険なTPOがあり、男だって住むなら安全な場所の方がいい。
 
男の子ならやられたらやり返してこい! 男の子ならレイプなんてされちゃだめだ!
 
こういう「男の子は小さなころからすでに屈強な男の一人である」という金太郎幻想は一見微笑ましいけれど、社会に深刻な影響を及ぼしている。
あなたの彼やご主人、お父さま、おじいさま、お兄ちゃんや弟が性的な被害にあったとき、またあっている時に、羅王でさえ無敵ではなかったことを思い出してほしい。
あなたもショックだろうけれど、こういう現実を思い知らされた本人のショックは計り知れない。

僕にはレイプされた経験のある知人が6人居る。
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