夫を亡くしてセブ島に留学することになった その19 帰らざる白物衣類とフェアトレードについて

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シャワーだけの暮らしが想像以上にきつくて到着後まもなくバケツと電気ポットを買った。T'say Hotel はシャワーからしか湯がでない。そしてシャワーヘッドがない。つまりバケツに湯を張ることができない。まあ出ても湯はたいていぬるいので、熱い湯をわかすのに電気ポットが大活躍。確かバケツが1000円、ポットは1500円くらい。これに塩を入れてむくみ対策の足湯をする。毎日母と交代で使っている。 

追記:日本人経営のストハウスで立ち寄り湯ができるというタレコミをいただきました

 

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身体は石鹸と手ぬぐいで洗う。手ぬぐいは乾きが早く、かさばらず、あれこれ使えて本当に便利だ。しかしバケツに清潔な湯を張ってもそこに石鹸で洗った手足をつけてしまうと湯がすぐ濁る。湯を汲む手桶と手ぬぐいをすすぐ洗面器がほしい。でも持ち帰れないものが増えると帰国時に大変だ。

 

バケツは洗濯にも使う。週に二度ランドリーサービスを受けられるのだけれど、洗濯機で激しく丸洗いしたんだろうなあという仕上がりなのでデリケートな衣類は怖い。母がランドリーに出した薄手の綿ワンピースはかぎ裂きができて戻ってきた。

 

またこちらの水はどうしたわけか日本で洗ったときは色落ちしなかったものまで色落ちする。紺色の手ぬぐいをすすぐたび水が青く濁る。ランドリーサービスに出した衣類は色物と白物を分けずに洗っているようで、先述の母の白いワンピースは薄汚れた灰色になって戻ってきた。「いちばんお気に入りだったの」と思い出しては凹む母。

 

母はリネン類もよそいき&とっておきを持ってきた。いまとなっては後悔しきりである。肌触りのいい純白のタオルは違和感のある手触りでグレイッシュに染まって戻ってきた。水に問題があるのか部屋で洗いなおしても元には戻らない。

 

母方の祖母は洗濯にこだわりのある人で、102歳で世を去るまで全自動洗濯機排斥主義だった。祖母は生前「洗濯槽と脱水層が同じ洗濯機では清潔に洗い上げることはできない」といっていたが、確かに祖母が洗い上げた衣類はそれはそれは清潔に、白いものはどこまでも白く、色物は色鮮やかに、美しく手触りよく戻ってきていた。

 

母はこの血を受ぎ、祖母ほどではないが全自動洗濯機はコースが終了しても衣類の状態を見てどう仕上げるかを判断する。「まかせちゃおけないわ」と母はいう。いわんやコインランドリーをやである。セブ島へ来てから母がホテルで手洗いするものは日に日に増え続けている。

 

わたしはとっておきの衣類は持ってこなかった。父方の祖父が「おじいちゃんは旅行には仕舞いにする服を持っていって宿に捨ててくる」と言っていたことを考えて、むしろ帰りに捨てていい服を選んできた。しかしわたしも淡いラベンダー色に染めた絞りのワンピースを一枚だけ持ってきており、これは手洗いする。やっぱり洗面器がほしい…!

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というわけで先日洗面器も買った。ホテルのクローゼットにはハンガーが一本もないので、ピンチつきのハンガーも買った。洗面器25ペソ、ピンチつきハンガー2本67.5ペソ。左上はサワーオニオンチップでこれは20ペソだった。計112.5ペソ※約230円

 

洗面器を思い切ったのは持ち帰れないものの引き取り先が決まったからだ。先日講師のひとりに「帰国するさい電気ポットとバケツを使ってもらえないか」と打診したところ、喜んで使わせてもらうという返事をもらった。彼女が滞在するドミトリーのシャワーも水圧が低くぬるいお湯しか出ないのだそうだ。セブは電気代が高いと聞くけれど、電気ポットの維持費に問題はないかとたずねたところ、自室で使う電気類といえばスマホの充電くらいで他に持っている家電品はないとのことだった。

 

こちらの時給相場は50ペソから100ペソ、約100円から200円だ。高学歴、高TOEICスコアを持って時給100円スタートの世界では、バケツと電気ポットを買うには4~7日分の給与が必要になる。低学歴スキルなしの給与はさらに低い。*1

 

講師は朝は学校から支給されるMILOを飲み、昼は持参した弁当を食べ、夜はほとんど食べないという。「痩せるよ!」というと「私はあなたと違って痩せていいのよ」と笑う。「太らなくていいけど、野菜は必要でしょ?」「そうね。私は故郷じゃ野菜を食べるし料理もするけど、ここで野菜をとるのは難しい。たまに外食するけど、野菜はあまりないし油っこくて」確かにセブの屋台料理は肉と炭水化物ばかりで油っこい。

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講師はこの暮らしの中から毎月故郷の親類縁者に送金している。彼女が特別貧苦に喘いでいるわけではない。別の学校の講師と意気投合して飲みに行った生徒が講師の自宅にあげてもらったそうだが、三畳あるかどうかという古くみすぼらしい居室に大変衝撃を受けたという。学校によっては季節労働者のように繁忙期のみ講師を増員し、その後解雇する。保障は何もない。

 

給与がいいのは政府関係の仕事、つまり公立校の教師、軍人、そして外資系のコールセンターだという。「コールセンターの給与はいいからコールセンター勤務者は100ペソの珈琲を平気で飲む。でもそれは失礼な顧客に対応して疲れてしまうから。三交代制で夜勤もあるし、オフィスは毎日とても寒い」きついけれども給与はいいといっても実際には夜勤分の上乗せありきで、実質的には語学学校講師と変わらないようだ。*2

 

フィリピンでは月に1万円もあればお腹いっぱい食べられて、そこそこの家に住めるというならいいけれど、彼らの多くはつましい暮らしを強いられている。わたしはそこに乗っかる外国人のひとりだ。個人的にフェアトレードを実践するとしたら何ができるのか考えてしまう。

 

英語ができたら仕事の幅がどんなに広がるかと思うのだけれど、フィリピンでは数多くの優秀な人材が生活苦にあえいでいる。政治的な問題も多く、マニラでは家のない子供たちが珍しくないと聞く。しかし安全な対岸から彼らを気の毒がっている場合ではない。

 

人件費が安く英語が堪能で若く力があり、機会さえあれば海外進出を願う働きものでいっぱいの国と、人件費は高く英語はおぼつかず、なるべく働かずに自国から出ないで暮らしたい高齢者でいっぱいの国が、10年後どのような道を歩んでいるかについても考えておかなければならない。

はてなハイク終了のお知らせという残酷な宣言

labo.hatenastaff.com

はてなハイクが終わったら生きていけない。

 

といいたいところだけれど、もちおが死んでも生きていけるんだからはてなハイクがなくなっても生きていける。でもはてなハイクがなくなるということは2009年からの人生の記録がまるまるなくなるということで、それはもちおをもう一度失うに等しく、あまりの仕打ちに嗚咽も出ない。

 

わたしはいま04年からのもちおの mixi を心のよすがに生きている。ちびちびと少しずつ読んでその頃の日々を思い出しているのだ。yahoo! ジオシティーズもなくなってしまうそうだけれど、あれは移転先を用意するらしい。でも書き手がこの世にいないサイトはそこで消えてしまう。

 

はてなハイクを遡ればそこにもちおとの日々があると思っていたのに*1なぜなの、はてな。ひどいよ、はてな。金か。金を出せば残してくれるのか。いくらだ。

 

メールもアドレス帳もデジタル画像も、デジタルデータは一瞬で消える。預けておけば安心な気がして次々預けておくけれど、預け先が消えるとき大量のデータを簡単に引き出せない。もうもう本当に途方に暮れる。どうせ死んでしまえば残らないといえばそれまでだけれど、もう何十年か残しておいてもらえませんか。わたしたちの愛しくかけがえのない記憶遺産を。

*1:主に「今日のダンナ

夫を亡くしてセブ島に留学することになった その18 セブワノの薦め

留学二度目の日曜日。来週末はボランティア活動があり、再来週末には帰国するので観光するなら今日しかない。3Dアカデミー森田社長から「セブ島へ来たからには一日ぐらい青い空と青い海を見てはどうか。シャングリラがおすすめ」といわれてその気になったが根が出不精なわたしと倹約家かつご近所散策至上主義の母は今日も学校回りを散策して一日を終えた。というわけで、本日もセブシティ華やかゾーンは出てこない。そして長い。まあ読んでいって。

 

 

セブ犬とセブ猫 

セブ島雨季の真骨頂はまだらしいが時々一瞬大雨が降る。雨が降った後はカンカン照りで、3Dアカデミー新校舎前のガソリンスタンドにたむろする犬さんたちが車の下で日除けして休んでいた。犬さんたちは人とも犬ともほどよい距離を保ちながら平和に暮らしていおり、見ていると和む。しかし狂犬病ワクチンを受けておかないと危ないらしいのでやたらになでたりはしない。

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猫さんも石の床に腹ばいになって休んでいる。ホテルの床も石なんですが、クーラーなしでも部屋が気持ちひんやりするのはそのせいだったのかと猫さんを見て気づきました。

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セブシティ高級住宅街

母は昨日散策した道のひとつがどこへ向かっているか知りたいという。クリアしたゲームの分岐を埋めるようにホテル周りを歩く。今日は高級住宅街を散策した。屋敷の屋根を遥かに見下ろす椰子の木や塀からこぼれ咲く花々に囲まれた屋敷が続く。

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屋敷に挟まれた坂道をトヨタマツダ、三菱と日本車が次々に通り過ぎていく。家々の門にはカメラが、通りに面する塀と窓にはデザイン化された頑丈そうな柵が、あるいはまごうことなき鉄条網が張り巡らされている。神戸の六麓荘町を思い出す。

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この国の平均時給が100ペソ(=約200円)前後であることを思うとこれだけの車と家を所有する世帯はいったいどんな仕事をしているのか想像もつかない。ほんのわずかな通りを抜けたところにスラムのような街が広がっていることも、それどころか対面の空き家前がゴミだらけになっていることも嘘のようだ。

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家々はどれも思い思いに贅をつくした作りになっており、眺めていて飽きない。しかしここは観光地ではなく住宅街なので家の前で写真を撮っている外国人は目立つ。庭先から不審げにこちらを眺めている住人たち。というわけで、あまり写真を撮る気になれなかった。李下に冠を正さず。

 

軍人さんに怒られる 

セブ市六麓荘町を抜けると昨日の基地へ出た。昨日と同じようにゲートを抜けると厳めしい軍人さんに呼び止められる。「目的はなんだ。教会?ゴルフ?」「散歩です」「それなら出ていけ。ここは基地だ」えー。

 

ゲートの出口に受付用紙らしきものを持った別の軍人さんがいた。「ここは基地だ。いまは一般人の入場時間ではない」なにー。困惑するわたしたちの横をテニスラケットを脇に抱えた女性や子供が受付用紙に何か書いて通り過ぎていく。どうやら施設利用者は目的を書いて出入りするらしい。昨日慰霊碑の写真を撮らないように注意しにきた軍人さんも受付係だったのかもしれない。

 

がたいのいい軍人さんの鋭い目つきときつい口調に母は不安そうな顔をして「じゃ、また来ましょう。サンキュー」と日本語でいった。わたしはとぼけて「じゃあ何時だったらいいの?」「昨日来たんだけど、とてもいいところだったからまた来ました」と食い下がってみた。

 

「学生か?」軍人さんはわたしたちが首から下げた学生証を見ていった。「そうです。先生が*1『ここはとても静かで緑が多くていいところだ』といったので来ました。彼はここを早朝ジョギングしていたといっていました。外はうるさくて眠れないんです」「どこから来た」「日本です」

 

軍人さんは早口で「パスポートを出せ」といった。「ありません。学校にあります」「ではIDを置いていけ」「これ?」わたしは学生証を差し出した。「ここに名前と住所を書け。歩いていいのはこちら側だけだ」「歩いていいの?」「こちら側だけだぞ」軍人さんは昨日わたしたちが散策したゴルフ場がある側を指さした。おー!例外対応だ!

 

わたしは受付用紙に名前と学校名を記入して「サラマッ」と笑顔で伝えた。サラマットとはセブ語でありがとうという意味だ。軍人さんの表情がふいに和らぐ。

 

 「一時間で戻ります」「二時間でもいいぞ」「わかりました」学生証を渡してよかったのかどうか少し不安もあったが、いざとなれば3Dのスタッフに泣きつけばいいやと思って緑の並木道を歩いた。

 

キャンプラプラプ二周目

入ってすぐの教会から歌声がする。日曜礼拝中らしい。礼拝に来たといえば入れてくれたのかもしれないけれど、なんか教会を出汁に嘘つくのも罰当たりなので嘘つかなくてよかった。

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聖人らしき人物が胸元に何やら金色の球を抱えている。こんな聖人はじめて見た。日曜礼拝中だからか、敷地には昨日ほど人がいない。満席だったゴルフの打ちっぱなしもバレーボールコートもバスケットボールコートも閑散としている。

 

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教会の隣の施設。確か First hero of the Philippines と書いてあったと思う。「誰だろう?」「誰かしら?経営者?」「そんなわけないでしょ」マクタン島領主ラプ=ラプの像だった。

ラプ=ラプ(Lapu-Lapu、1491年? - 1542年)[要出典]は16世紀、フィリピンのマクタン島(セブ島の東沖合い)の領主であり、イスラム教徒の部族長。世界一周航海の途上でフィリピンへ来航し、キリスト教への改宗と服従を要求するフェルディナンド・マゼランらをマクタン島の戦いで破り、マゼランを討ち取った。フィリピンでは民族の誇りを守った国民的英雄とみなされている。

ラプ=ラプ - Wikipedia

 そうなのか。入り口にあった教会のことを思い出すと微妙な気持ちになる。しかし信教の自由と民族の誇りは共存できる。自主的に選び取るのと改宗を強制されるのとはまるで違うからね。

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ゴルフ場の奥には訓練所らしき建物がいくつもある*2。昨日は女の子たちが施設前のタンクにまたがって絵を描いていたが、今日は屋外テーブルに迷彩服を着た軍人たちが座ってノートを広げて何やら熱心に勉強している。「あの人たちは何をしているんだろう」とチラチラ様子をうかがっていたが、先方も同じ気持ちだったようでチラチラこちらを見ている。筋肉ではちきれんばかりのがっしりとした男たちの姿を緊張気味に眺めながら蟻塚のところまで来た。

 

セブ語効果

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母と二人で蟻塚を撮っていると後ろから歩いてきた女性が何かセブ語らしき言葉で話しかけてきた。「写真を撮るな」と言われているのかと思って聞き返すと笑顔で「写真を撮ってあげましょうか?」と英語で言い直してくれた。

 

喜んで母と二人の写真を撮ってもらった。「サラマッ」とセブ語で感謝を伝える。女性はほんの少し驚いた顔で微笑みながら手を振って去っていった。「セブの言葉を覚えてよかったわね」と母が言う。「みんなあれで話すとすごくうれしそうじゃない。雰囲気がガラッと変わるのがわかるもの。さっきのゲートの人もそうだったでしょう」

 

セブにはセブワノと呼ばれるセブ語がある。これはマニラのタガログ語と少し違う。わたしが覚えたセブ語は「おはよう」「こんにちは」「こんばんは」「ありがとう /どういたしまして」「元気?/元気よ。あなたは?/私も元気」「気をつけてね」「またね」「きれい」「かっこいい」「つかれた」そして「私の傘」。

 

このうち「どういたしまして」はありがとうと言われる機会がないので使ったことがないが、ほかは隙あらばセブ人を見るたび連発している。セブ語で呼びかけるとセブワノたちは真顔から笑顔になってセブ語で返してくれる。そして「これはセブ語でなんていうの?」と聞くと親切にセブ語を教えてくれる。*3

 

そして「なぜセブ語を覚えているの?」と続けて聞かれる。「ここはセブ人が多いから」と答えると「ああ、そうか。確かにね」と納得される。「英語とセブ語と二つも覚えて大変だね!」と笑われることもある。学校に英語は学びにきてもセブ語で呼びかける生徒は少ないようで、セブ語で話しかけると顔を早く覚えてもらえる。お互い標準語で知り合ったもちおとも、もちおの地元山口弁で話すようになってから距離が近くなった。方言はいい。セブへ来る機会があったらぜひセブ語をいくつか覚えてセブワノに挨拶してみてほしい。

 

受付おじさんビフォーアフター

出口で受付担当の軍人さんのところへ戻る。「こんにちは~!」とセブ語で呼びかける。「一時間経ったよ」「一周しか回らなかったのか?二周しろよ。歩くのは身体にいい」「そうね、確かに歩くのは身体にいい。でも喉が渇いたからカフェにいきたいの。ここにはカフェがないでしょう」「カフェならゴルフ場のなかにある」「え!」「ゴルフはどうだ」

 

軍人さんはさっきとは打って変わって親しい知り合いを迎える顔をしている。「ゴルフはしたことがない。いくら?」「ゴルフボールがバケツ一杯300ペソ、使用料は600ペソ」「そっかー。じゃあいつかやってみる」「T'sayホテルにいるのか?」「なぜ知ってるの?」「あそこから日本人が来るからな。トヨタカワサキヤマハ…日本企業はすごい」「サラマッ!セブアノは頭がいいし、親切だし、やさしいね。子供たちが母にブレス*4をしてくれて…」「母?彼女はおまえの母さんなの?本当に?!」

 

 なぜだかわからないけれど、わたしと母が親子だと伝えるとみんなとてもびっくりする。そして母も英語留学中だと知るとさらに驚く。「じゃあ二人とも生徒なの?おー!あんたの母さんすごいな!何歳?」「あー…ご想像におまかせします」母は困った顔で答える。学校でも母の年齢を知りたがる講師は多く、母はその都度あいまいに微笑んで話をそらしている。

 

「おまえの母さんはドイツ人?」「いいえ、日本人。祖父母も日本人」「へえ!イギリス人かと思ったよ」「母はよく混血と間違われるの」「そうだよな。きれいだし、顔がこう、シュッとしてる。うん」軍人さんは親指と人差し指で自分の頬から顎をシュッとつまむような仕草をしてみせた。「母の若い頃の写真があるの。見る?」「見る見る」この流れも学校でよくある。母が横から日本語で「もう、やめなさいよ!」と怒っている。先日も「あの先生、美人だ、美人だってうるさいのよ。うんざりして By the way って話題を変えたわ」といっていた。美人だ、美人だってうるさいのよ。いってみたいですね。それからはっとしたような真剣な顔で「イギリス人を見たことないのかしら?」ともいっていました。そんなわけがあるか。

 

「あんたは結婚してるのか。子供は何人?」「子供はいない。夫は今年の8月に亡くなったの。それであんまり寂しくこれじゃダメだと思っててセブへ来たの」「なぜ?事故?病気?煙草や酒をやっていたのか」「胃がんだった。働きすぎ。日本人はみんなそう。寝ない、食べないで働く」「おー。なるほどな。じゃあ未亡人か」「そう」「フィリピンには独身の男が大勢いるぞ」寡婦歴三カ月目ですが、この返しははじめてですね。

 

「結構よ。夫はいまもわたしと一緒にいるから」「母さんも独身?」軍人さん、すっかり世話焼きおじさんと化してきた。 見合い話の一つも持ってきそうな勢いである。「サラマ。わたしたちカフェにいくわ」わたしはセブ語で「またね」といった。See you はセブ語で Kita ta unn ya という。キタタゥンニャと発音する。ニャースっぽい。「OK, Kita ta unn ya」軍人さんは笑顔で手を挙げてセブ語で返してくれた。

 

わたしと母は顔も趣味も違っているけど、名所旧跡レジャー施設に興味がないという点で方向性が一致している。わたしはどこへいっても人と暮らしに興味があり、母は土地と暮らしに興味がある。ぶらぶらと歩きまわっていい日曜日だった。それではみなさんキタタゥンニャ。

*1:森田社長は先生じゃないけどな。

*2:これアップしていいのかちょっとわからんわ。怒られたら消す。

*3:数名のミンダナオ島出身者からは「地元はセブじゃないんで」と返された。フィリピンには70を超える言語があるという話はそのとき聞いた。

*4:年長者への敬意をあらわすしぐさ。額に手をつける

夫を亡くしてセブ島に留学することになった その17 HERO

英語の勉強と三度の食事が楽しみで早起きを続けてきましたが、生活の組織化が追い付かないため夜更かしがやめられず、無理が祟って持病の腎臓病が悪化したのか血尿に混じって血の塊が出てきた。疲れたり風邪をひいたりショックなことがあったりすると血尿はよくあるんですけど、血の塊を見てぎょっとした。

 

日本に帰っても休んでおくしかないのでひとがいてご飯が出てくるところで寝ている方がいいんじゃないかと思う。よく考えたら塩気が強いものを食べても血尿が出るので辛いおかずをモリモリ食べるのも控えて水をもっと飲むことにする。最悪帰国も視野に入れつつ週末は大人しくしていようと思う。

 

今日は3Dアカデミー森田社長に教えていただいてホテルの近くの基地を散歩してきた。JY Squareを背にT'sayホテルの前の通りを突き当たったところです。

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この辺りを知らなければ「広々とした気持ちのいいところね」でおしまいなんだけれど、ゴミと排気ガスと埃まみれのセブシティJYモール周辺に、こんな静かで清々しいところがあるなんて信じられない思いだった。

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一時期森田社長が基地内をランニングコースにしていたいう。セブで表を走るなんて寿命が縮むと思ったけれど、確かにここを毎朝歩けば身体の調子もよくなるんじゃなかろうか。f:id:kutabirehateko:20181118002229p:plain

入ってすぐにブロンズでできたマシンガンとヘルメットが刺さった戦没者慰霊碑があり、解説を撮っていたら軍関係者がやってきた。案内を撮るのはいいが、慰霊碑を撮影するのはあかんという話だった。戦没者を「HERO」と呼んでいたのが印象的だった。

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数多くの島でなるフィリピンは70を超える言語があり、言語の数を上回る民族がいる。人口は一億を超え、平均年齢は23歳だという。それらの人々が一堂に会し、命を賭して戦った。この小柄ではにかみ屋で呑気で家族愛の強い人たちが家族を後にして戦場へ赴いたこと、家族を戦地で失ったことを重く感じた。血筋を遡れば自分もその戦争と無縁ではない。

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「国があなたに何をしてくれるかと問うな。あなたが国のために何ができるかを問え」ージョン・F・ケネディ

 

敷地には軍の宿舎があり、運動施設で球技に興じる子供や大人をたくさん見かけた。

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「座っていい?」と尋ねる母に「いいよ」と返事をする子供、同じく母から「これはなに?」と尋ねられて「蟻塚だと思う」と説明してくれる子供に出会う。

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見知らぬ外国人に話しかけられて普通に英語で返せるセブの子供は世界と繋がる力を持って大人になる。わたしたちはその片鱗を手に入れたくて遠く海を渡ってきた。

 

基地を出て路地裏を散策する。歓声をあげて通りを走り回る子供がいっぱいいた。「戦後はどこへいってもこうだった。いまの日本にはこんな光景どこにもないわね」母がしみじみとつぶやく。わたしが子供だった頃にはまだこういう光景があった。2018年現在、日本の平均年齢は46歳に届きそうだ。

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通りを眺めてぶらぶら歩いていたら突然ひとりの男の子が母のところへ駆けてきた。彼は黙って母の右手を取ると、甲を自分の額にそっとつけた。彼が後ろへ下がると彼のそばにいたさらに幼い女の子たち二人も続けて母の右手をとり、甲を各々の額にちょこんとつけた。以前カフェで珈琲を飲んでいたら幼い女の子がやってきて、さっとわたしの右手の甲を自分の額につけたことを思い出した。

 

調べてみるとこれはブレスといってフィリピン式の年長者への挨拶なのだそうだ。日焼けした小さく冷たい子供の手に包まれて柔らかな前髪に触れる感触は何とも言えない。

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見知らぬ外国人に自分の方から敬意のこもった伝統的な挨拶ができるフィリピンの子供らは英語力とは違う優れた強みも持っている。この子たちが慰霊碑を過去のものにできる世界であってほしい。及ばずながらこの子達が作る世界で働ける生き方をしたい。

 

来週の週末は学校主催のボランティア活動に参加する。フィリピンのさらに厳しい現実を見ることになると思う。人件費が安うて贅沢できると浮かれとったらあかんの。フィリピンが何をしてくれるかやのうて、フィリピンに何ができるか考えんといけんの。

夫を亡くしてセブ島に留学することになった その16 通学鞄の中身

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通学鞄に入れているもの。結構重い。何か減らせないかといつも思う。

 

上段左から右へ

・学校で買ったテキスト 400ペソ※約800円

 Besic を注文したらIntermediate が来て、結局両方買った。現在 午前中のマンツーマンレッスンで Basic をやっている。いい本だけど明らかにコピー本で著作権が守られているかどうかあやしい。そして重い。午前の授業で使うので、午後に一度ホテルへ戻ったときに置いてくる。

Amazonで検索してみた。うん、これだな。買ったらダメなやつだった。ショック。

 

日本語版もあった。

 

 

・筆箱

 消せるボールペンFlixion が大活躍。こちらにはないそうで講師はうらやましがっていた。お土産には消せるボールペンと替え芯がいいですよ!母は赤鉛筆を持参したけど鉛筆削りがなくて困っていた。鉛筆持参する方は鉛筆削りを忘れずに。

 

 

・大判ハンカチ

 トイレにペーパータオルはないので必需品。膝に広げたり雨降り時に髪を覆ったり肩を拭いたり涙を拭いたりする。手洗い部屋干しで毎日使う。

 

ニンテンドーDSと英語漬け

 英語漬けをやるためだけに持ってきた。事前学習はほぼこれだけだったが単語をガリガリ書く練習になって役に立った。書き取りマラソンやると講師にウケる。個人的に作りがシンプルでテンポのいい1がおすすめ。2は回答するたびいちいち日本語解説を入れてくるので鬱陶しい。

 

 

・仕事で使う英会話を記録しているA5赤ノート※学校からの支給品

 単位や専門用語、よく使うフレーズをメモしている。滞在中に外貨を稼ぎたい。

 

・セブアノ語と雑多なメモを記録しているB6ミニノート

 セブアノ語と便利な英語のフレーズ、アドレスなどこちらにメモしてバッグのポケットに入れている。セブアノに会ったらすぐに出してセブ語を使っている。

 

・アンチバクテリア仕様のウェットティッシュ

 「風邪、下痢、腸チフスアメーバ赤痢A型肝炎」など恐ろしい病対策。「水道水にはバクテリアがいるわよ!」と講師にいわれて震えあがる。*1切実。母は手を拭いたあとテーブル周りを拭き、ホテルへ持ち帰り床掃除にも使っている。都心部なら現地のドラッグストアで買える。

 

・グループディスカッションなど記録しているツクモたんB5ノート※もちおの遺品*2

 Grammar, Speaking, Discussion, その他雑多な英語学習を一切合切メモする覚え書きノート。誰も突っ込んでこないが萌え萌えで恥ずかしい。

 

・課題とクリアファイルケース

 出された課題や学校からの通達などを入れる。

 

・学校の身分証明書

 校舎とホテルの出入りなど8時から19時まで常時携帯しなければならない。内部寮は帰宅後セキュリティーガードに預ける。再発行は700ペソ。

 

・使い捨てマスク※学校から提供されているもの

 切実。マスクなしで外出すると鼻はもちろん口の中まで排気ガスの味がして苦しい。PM値を測定してみたい。何度いってもマスクをしない母はこちらへ来てから鼻毛が伸びるのが異常に早いといっている。都心部なら現地のドラッグストアで買える。

 

下段左から右へ

・携帯用折り畳みジェルクッション

 椅子がどれも硬いので個人的に切実。これなしには受講はおろか食事も部屋でブログの更新もできない。もちおの尻がなくなってしまった最後の日々もこれのおかげで本当に助かった。これさえあれば外でアジア椅子にも座れる。

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Amazonで買える。楽天にもあるけどなぜか高い。

 

・電子辞書とケース

いただいたAmazon ギフト券によるお香典を使って母とお揃いで奮発させていただきました。慰めの贈り物をありがとうございます。お心遣いは留学の友となり、日々活躍しております。

 

和英、英英はもちろん広辞苑、ブリタニカ、古語・漢語など辞書機能のほかにTOEIC対策、英検対策、聞くタンやリトル・チャロなど独習コンテンツが充実しているとい触れ込みで買ったが、そこまでやり込めていない。学生向けなので親が喜ぶようなコンテンツが充実しているが、こうしたゲーム要素はやる側の意欲を高めるユーザビリティは低い。

 

母はGoogle翻訳さえあれば電子辞書なんていらないと豪語していたが、Googleは用例や語源、例文作成までしてくれないのでやはり辞書はあると大いに役に立つ。例の問題なんかも辞書をよくよく読んだら例文にかなりヒントがあった。専門用語にも強い。

 

 

・コインパース

 キーケースを一時的にペソ用コインパースとして使っている。

 

・ビタミン剤やティッシュなど手回り品収納ポーチ

 基本的にどこにもトイレットペーパーがないのでティッシュを忘れると悲惨。持参したティッシュペーパーを折り畳んでポケットティッシュケースに詰め替えてサニタリー類と一緒に持ち歩いている。

 

 ビタミン剤はリポソームビタミンCカプセルを数時間置きに飲み、寝る前はパウチタイプとミドリムシの力も飲む。もちおはリポゾームビタミンCで相当善戦していたが、これが飲めなくなってからはあっという間だった。普段は iharbで買うが出発前の時間がないときにAmazonで買えたのは割高でもありがたかった。切実。この他小麦をとるときには iharb でまとめ買いしたグルテンダイジェストも飲んでいる。快腸。

 

手回り品ポーチには日焼け止めと口紅、アイブロウ、アイライナー、眉用剃刀、香水、アロマオイルなども入っているが、まったく使っていない。誰も見てないしもちおもいないし仕事でもないしどうでもいいや感がすごい。しかし周りはそれなりにきちんとお化粧している。何より母は毎朝薄化粧してから登校する。明日こそ身だしなみをと思って持ち歩いているけどきっとこのままやらない。「櫛で髪を整えなさい」と日に何度か母に注意される。その都度髪を梳くけれど「どうせまた湿気で広がるからいいや」と思っている。

 

・綿ストール

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どこもかしこも蒸し暑いかエアコンで冷え切っているかという状況なのでストールは重宝する。風除けになり、べたつかず、濡れてもすぐに乾く、軽い、かさばらないと大変便利。みなさんにおすすめしたい。

 

しかしセブではストールで自衛する習慣がないようで、その辺に売っていない。母が一枚欲しいというのでアヤラモールまで探しに行ったがあの広いショッピングモールでストールを見つけるのは大変だった。最終的にお土産売り場の親切な店員が別のフロアの縁もゆかりもないハイブランドっぽい店まで案内してくれた。500ペソ少々。現地価格の相場からするとお安くない。

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綿100%にこだわる母。文字が小さすぎて見えないよ!

 

・通学鞄

空港でみつけた MILESTO UTILITY ポケッタブルトートバッグ 18L に上記の一切合切を投げ込む。折り畳むと手のひらサイズ、広げると軽量&大容量、キャリーケースのハンドルを通す口があり、さらに通したハンドルをマジックテープで固定できるようになっていてとても便利。外ポケットひとつ、内ポケットひとつ。外ポットにスマホを入れると講師がいつも心配する。

明日は二度目の週末ですが、母は復習に充てると申しておりますし、わたしは明日こそたまった仕事と睡眠負債を片付けたいので観光などの予定はない。セミスパルタ・インドアウィークエンドの予定です。

*1:しかし歯磨きは水道水でしている。

*2:ツクモたんノートやクリアファイルケース、カレンダーなどいっぱいあるので欲しい方は連絡ください。